
「広告をどこかに任せたい。でも不動産に詳しい代理店なのか、ただ広告枠を売りたいだけの会社なのか、見分けがつかない」
ポータルの掲載料は払い続けている。チラシも撒いている。その上でWeb広告を外に頼もうとすると、営業の電話は来るのに、比べる物差しが手元にない。そこで止まってしまう不動産会社は少なくないはずです。
先にお断りしておくと、Stellariumは不動産会社の広告を直接担当したことはありません。担当してきたのは千葉のリフォーム会社の検索広告と工事ごとの専用ページ、注文住宅の相談窓口のLP。同じ家のお客さんを相手にした広告の仕事で見たことと、不動産の広告の公式なルールを材料に、代理店を選ぶときに確かめることを並べます。
集客の手段をどの順で整えるかは、不動産会社の集客方法にまとめました。ここでは、広告を外に頼む場面だけを扱います。
不動産の広告代理店に頼む前に、任せる範囲を決める
外に出すのは作業で、材料は手元に残す。これが決まっていないと、代理店の提案を比べられません。
物件の写真、現地で気づいたこと、地域の相場の感覚、反響への返事の速さ。どれも社内にしかないものです。代理店が持っていないものを、代理店に作ってもらうことはできない。外に頼みやすいのは、キーワード選びと配信、広告の受け皿になるページの制作、数字を見ての手直しのほうです。
どの反響に広告を使うかも先に決めておきます。賃貸の部屋探しはポータルに反響が集まりやすく、売却の査定は広告の単価が高い。この違いは親記事に数字つきで書いたので、ここでは繰り返しません。
広告は売却か売買の反響に絞る。そう決めてから代理店と話すと、「賃貸も売買も全部まとめて」という見積もりに流されずに済みます。
不動産の広告会社は、4つに分けて見る
2026年10月16日に、Googleのキーワードプランナー(広告アカウントがあれば無料で使える調べ道具)で、代理店を探す側の言葉を取りました。全国の数字です。
| 検索語 | 月の検索数 | 上限クリック単価の目安 |
|---|---|---|
| スーモ 広告 | 140 | 687〜1,099円 |
| 不動産 広告 代理店 | 90 | 457〜1,731円 |
| 不動産 広告 会社 | 30 | 444〜2,806円 |
| 住宅 広告 代理店 | 30 | 目安なし |
| 不動産 リスティング 広告 | 20 | 1,404〜6,048円 |
| 不動産 専門 広告 代理店 | 10 | 506〜1,262円 |
代理店を探す検索より、ポータルの掲載を調べる検索のほうが多い。不動産会社にとって「広告を頼む」は、まずポータルの掲載を意味するのだと読めます。ただ、同じ広告代理店でも中身は4つくらいに分かれる。
| 種類 | 主な仕事 | 確かめること |
|---|---|---|
| ポータルの営業 | ポータルの掲載枠とオプションの販売 | 掲載以外のWeb広告まで見るのか |
| 総合代理店 | チラシ、看板、Web広告をまとめて手配 | 運用を誰がしているか、外注か |
| 運用専門 | Google広告やMeta広告の配信と調整 | 受け皿のページを誰が直すか |
| 個人 | 運用とページ制作を1人で | その人が止まったときに何が残るか |
ポータルの営業は、ポータルの中で反響を増やす話は得意です。売却の査定を会社のホームページで受けたい、という相談になると、担当の範囲から外れることがある。総合代理店は窓口が1つで済むかわりに、Web広告の運用を別の会社に出していることもあります。
どの種類が正解かは決まっていない。聞くべきは「管理画面を触るのは誰か」と「ページを直すのは誰か」の2つです。
費用は、広告費と手数料と制作費に分けて聞く
見積もりは、媒体に払う広告費、代理店に払う運用の手数料、ページや画像を作る制作費の3つに分けてもらいます。まずはそこから。
手数料は広告費の何%か、月額の固定かで決まることが多い。率が同じでも、最低手数料があると広告費が少ない月ほど割高になります。この計算は広告運用代行の費用相場に料金表の例つきで書きました。
不動産で気をつけたいのは、上の表の「不動産 リスティング 広告」の上限の目安が6千円を超えていたことです。売却の査定のような言葉を狙うと、1クリックの単価が高くなりやすい。予算が小さいまま全国の言葉に出すと、数クリックで1日の予算が尽きる。見積もりの段階で、どの地域のどの言葉にいくら使う想定か、代理店の答えを聞いておきます。
不動産広告ならではの確認点は、規約とターゲティング
ここが、不動産の広告を任せる相手を選ぶときの分かれ目になります。一般の広告運用の知識だけでは足りない。
表示規約は、広告文にもかかる
不動産の広告には、不動産公正取引協議会連合会の「不動産の表示に関する公正競争規約」があります。物件の広告を作るときの決まりごとで、Web広告も対象。
規約の第18条第2項では、最高、格安、完全のような語や、日本一、厳選、完売といった語は、裏付けになる資料を持っていなければ使えないとしています。最上級を意味する語と、著しく安いと思わせる語は、根拠になる事実を一緒に書くことも条件です(規約と施行規則の本文PDF)。
検索広告の見出しは字数が短い。短い枠で目を引こうとすると、こういう語に手が伸びます。代理店が書いた広告文を、誰が規約と照らして確かめるのか。初回の打ち合わせで聞いておきたいところ。
規約は広告を出す不動産会社に向けたルールです。代理店が書いた文でも、出しているのは御社。
Meta広告の「住宅」のカテゴリは、日本向けなら申告の義務がない
Meta広告(インスタとFacebookに出す広告)には、住宅、雇用、金融の広告を対象にした「特別な広告カテゴリ」があります。申告すると年齢や性別で絞れなくなり、類似オーディエンス(今のお客さんに似た人に広げる機能)も使えなくなる。
申告が必要になるのは、アメリカ、カナダ、ヨーロッパに届ける広告です。Metaの開発者向け資料「Special Ad Category」に、カナダは2020年12月3日から、ヨーロッパは2021年12月7日から申告が必要になったと書かれています(2026年10月16日に確認)。日本の中だけに出す不動産の広告は、ここに入っていません。
聞くのは1つ。代理店がこの扱いを知っているかどうか。分からないまま住宅のカテゴリを選ぶと、店の近くに住む持ち家の世代に絞る、という不動産でやりたい配信がそもそもできなくなります。
Google広告の住宅の制限も、対象は米国とカナダ
Google広告にも、住宅を含む広告で使えないターゲティングがあります。Googleのヘルプ「制限付きターゲティング(パーソナライズド広告の場合)」によると、住宅、雇用、消費者金融の広告では、性別、年齢、子供の有無、配偶者の有無、郵便番号でオーディエンスを絞れません。こちらも対象は米国とカナダのみ。
海外に住む人へ国内の投資物件を案内するような広告なら、話が変わります。その場合は配信する国ごとにルールを確かめてくれるかを聞いてください。
査定の反響を、電話・フォーム・LINEで分けて数えられるか
売却の相談は、電話で来ることが多い。フォームの送信しか数えていない代理店だと、電話で来た査定の依頼は報告書に載りません。見えない反響になる。
千葉のリフォーム会社の検索広告では、フォームの送信に加えて、スマホで電話番号がタップされた数も成果として数える形にしました。どの地域のどのキーワードから来た問い合わせかまで分かるように、です。住宅の相談窓口のLPでは、LINEの友だち追加のボタンが押された数を広告の側へ送っています。入口ごとに分けておくと、何が見えるのか。たとえば広告からの成果が少ない月でも、電話のタップが増えていれば、フォームの項目が多すぎて電話に流れているのかもしれない、と読めます。全部を1つの数字にまとめていると、この読み分けができません。不動産なら、入口はこう分けておきたい。
- 電話番号のタップ(実際につながった件数は、社内の記録と突き合わせる)
- 机上査定や訪問査定のフォームの送信
- LINEの友だち追加と、そのあとの最初のメッセージ
- ポータル経由の反響(広告の数字とは混ぜない)
ポータルの反響はポータルの管理画面にあり、広告の管理画面には出てこない。代理店の報告書とポータルの数字を、月に1回、社内で並べて見る人を決めておきます。設定の手順はGoogle広告のコンバージョン設定にあります。
広告アカウントは、会社の名義で作ってもらう
あとで効いてくるのが、ここ。
広告のアカウントには、どの地域のどの言葉で反響が来たか、何を変えて数字がどう動いたかの記録がたまっていきます。会社の名義でアカウントを作り、代理店には運用の権限だけを渡しておけば、依頼先を変えても記録は手元に残る。代理店の名義で作られていると、やめるときに履歴ごと置いていくことになります。リフォーム会社の広告でも、アカウントは会社の名義で作り、広告費は会社から媒体へ直接払う形にした。Google広告の権限の種類やGoogleが代理店に求めている開示のルールは、Google広告の代理店の選び方に書いています。
初回の打ち合わせで聞く質問
初回の打ち合わせは、代理店が提案する場であると同時に、こちらが相手を確かめる場でもあります。今度はこちらが聞く番。
話がうまい営業の人ほど、こちらの質問より先に事例と提案を並べてくれる。それを聞き終えてから、このメモを出してください。
- 広告アカウントは会社の名義で作るか、今あるアカウントを使ってもらえるか
- 実際に管理画面を触るのは誰か。その人と月に1回は話せるか
- 広告の受け皿のページは誰が作り、直すときは何日かかるか
- 査定の反響を、電話のタップ・フォーム・LINEで分けて数えられるか
- 広告文に規約で使えない語がないか、誰が確かめるか
- 成約した物件の広告を、誰の連絡で何日以内に止めるか
- Meta広告の特別な広告カテゴリを、日本向けの配信でどう扱うか
- 最初の1か月で、どの地域のどの言葉にいくら使う想定か
- 最低契約期間と、やめるときにアカウントと資料をどう返すか
答えに詰まる質問があっても、それだけで外す必要はありません。「調べて次回までに返します」と言える相手なら十分です。危ないのは、「問題ないです」とだけ返して中身を言わないとき。
余談ですが、リフォーム会社の打ち合わせでは「比べられたときに選ばれたい」という言葉が何度か出ました。代理店選びも同じで、比べる側に回ったときの物差しを持っていると、営業の話の聞こえ方が変わってくる。
契約前に、報告書の見本を見せてもらう
毎月届く報告書は、契約したあとに代理店と話す材料のほぼ全部です。契約前に、別のお客さんの名前を伏せた見本でいいので見せてもらいます。
見るのは数字の表の下。
| 載っているか | 何が分かるか |
|---|---|
| 費用、クリック数、表示回数 | 最低限の配信の記録。Googleのルールでも求められている |
| 入口ごとの反響の数 | 電話、フォーム、LINEのどこが動いたか |
| 地域と言葉ごとの1件あたりの費用 | どこに予算を寄せるかの判断 |
| その月に変えた設定 | 止めた言葉、変えた広告文、足した除外キーワード |
| 次の月に試すこと | 代理店が何を考えて動いているか |
費用とクリック数だけの報告書が毎月届くなら、アカウントに手が入っているかどうかが外から見えない。その月に変えた設定の欄があるかどうかで、運用の中身がだいぶ見えてきます。
もう1つ、反響の件数を約束する提案には気をつけてください。リフォーム会社のときも、件数の約束はしませんでした。検索の数も競合の入札も地域ごとに違い、配信してみるまで分からないからです。約束できるのは、数字の取り方と、数字を見て何を直すかのほう。
不動産会社が代理店を選ぶときの、最初の一歩
明日からできることは2つあります。1つは、今の反響を入口ごとに書き出してみること。先月の査定の依頼が電話で何件、フォームで何件、ポータルから何件だったか。これが分かっていれば、代理店に「どの反響を増やしたいか」を具体的に伝えられます。もう1つは、上の質問のメモを持って、2社以上と話すこと。
Stellariumでは、千葉のリフォーム会社で工事ごとの専用ページの制作と検索広告の運用を、住宅の相談窓口でLPの制作と改善を担当してきました。不動産会社の広告でも、広告アカウントを御社の名義のまま預かり、電話・フォーム・LINEを分けて数える計測の設定から、地域ごとのキーワードの見立て、受け皿のページの手直しまで、同じ担当者が通して見られます。
- 不動産会社が広告代理店に頼むとき、最初に何を決めればいいですか?
- 何を任せて、何を社内に残すかです。物件の情報、地域のこと、反響への返事は社内にしかない材料なので手放しません。外に頼むのは、キーワード選びや配信、広告の受け皿になるページの制作、数字を見ての手直しです。賃貸の部屋探しの反響はポータルで集まりやすいので、広告は売却や売買の反響に絞ると話が早くなります。
- 不動産の広告は、表示規約を代理店が守ってくれますか?
- 不動産の表示に関する公正競争規約は、広告を出す不動産会社に向けたルールです。代理店が広告文を書く場合も、「格安」「最高」「完全」のような語は、裏付けの資料がなければ使えないと規約の第18条で決まっています。成約した物件を広告に残すとおとり広告になるので、物件を載せる広告では、成約の連絡を誰が誰にするかを契約前に決めておきます。
- Meta広告で不動産の広告を出すと、年齢や地域で絞れなくなりますか?
- 日本向けの配信では、申告の義務はありません。Metaの開発者向け資料では、住宅の特別な広告カテゴリの申告が必要なのは、アメリカ、カナダ、ヨーロッパに届ける広告です。Google広告の住宅の制限付きターゲティングも、対象は米国とカナダのみです(2026年10月16日に確認)。海外に住む人に向けて出す場合は、別に確認が要ります。
- 不動産の広告代理店との初回の打ち合わせでは、何を聞けばいいですか?
- 広告アカウントを会社の名義で作るか、査定の反響を電話・フォーム・LINEで分けて数えられるか、広告文や物件の情報を誰が確認するか、実際に運用する人と話せるか、毎月の報告書に何が載るか、の5つです。手数料の率は、この答えを聞いてから比べても間に合います。
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