
「海外のお客さんを増やしたいけど、広告ってどこに出せばいいの?」 「英語の広告を作ったとして、それって日本にいる人に出るの?それとも海外の人?」
観光地で体験やサービスをしている方と話していると、こういう声をよく聞きます。
インバウンド広告は、出す前に1つだけ決めておくと迷いが減ります。相手が旅行の計画を立てている海外の人なのか、もう日本に来ている人なのか。ここで媒体も、Google広告の地域の設定も、広告を出す時期も変わる。
私はふだん、国内のお店や会社の広告運用を代行しています。訪日客向けの広告で成果を出した数字は、正直に言うと手元にありません。いま関わっている北海道の出張撮影サービスは、お客さんのほとんどが海外からの旅行者ですが、広告はまだ出していない。その代わり、広告を始める前に計測を整えるところまで進めました。設定の画面と、その準備で見えたことを順に書きます。
インバウンド広告は「来日前」と「来日中」で出し方が変わる
同じ「訪日外国人」でも、広告を見る場所と、そのとき探しているものがまるで違います。
来日前の人は、自分の国で旅程を組んでいるところ。どの街に行くか、何をするか、どこに泊まるかを、検索やInstagram、YouTubeで比べています。来日中の人は、もう札幌や函館にいる。今夜どこで食べるか、明日の午前に何をするかを、スマホのGoogleマップや検索で探す。
北海道の出張撮影サービスは、来日前の側です。予約の受付は撮影日のおよそ2か月前から。桜、紅葉、雪の季節は早く埋まります。札幌に着いてから「明日撮ってもらえる?」と探す人もいなくはないでしょうが、広告費をかける相手は、まだ自分の国で旅程を組んでいる人です。
逆に、ラーメン屋さんやレンタル着物のお店なら来日中。現地に着いてから「近くで食べられるところ」を探す人に出すほうが、お金の使い道としてまっすぐです。
来日中の人が使うGoogleマップの情報(Googleビジネスプロフィール)は、広告より先に整えたいところ。こちらは親記事のインバウンド集客の始め方で、広告以外の手段と合わせて順番を書いています。
Google広告の地域ターゲティングは「所在地」と「所在地やインタレスト」で届く人が違う
北海道を選んだのに、海外の人にも日本の人にも広告が出ていた。インバウンド向けのGoogle広告で起きやすいのが、この地域の設定の取り違えです。
キャンペーンの「地域」で北海道を選ぶと、その下に「対象地域の詳細設定」があります。ここに2つの選択肢がある。
| 選択肢 | Google広告ヘルプの説明 |
|---|---|
| 所在地やインタレスト(既定) | 対象地域にいる可能性が高い人、よく訪れる人に加えて、対象地域に関心を示した人 |
| 所在地 | 対象地域にいる可能性が高い人と、よく訪れる人。関心だけの人は入らない |
(出典はGoogle広告ヘルプ「広告の対象地域を設定する」)
既定は「所在地やインタレスト」です。何も触らずに北海道を選ぶと、北海道にいる人だけでなく、北海道に関心を示した海外の人にも広告が出る。
関心はどう判断されるのか。Googleのヘルプには、地域がわかる検索語句、過去の所在地、Googleマップで調べている地域などが挙がっています。例として、パリに住む人が google.fr で「大阪 貸切バス」と検索すると、大阪が関心のある地域とみなされる、と書かれている(出典はGoogle広告ヘルプ「地域ターゲティングについて」)。
これがインバウンドではそのまま使えます。
来日前の人に出すなら、2通りの指定がある
海外で旅行の計画を立てている人に届けるには、地域の指定が2通り考えられます。
1つ目は、北海道を選んで「所在地やインタレスト」のままにする方法。北海道について調べている人なら、住んでいる国を問わず拾えます。ただし北海道に住んでいる人にも出るので、英語の広告文で、日本に住む人には関係のない中身だとわかるようにしておく。
2つ目は、アメリカ、台湾、オーストラリアのように、お客さんの多い国を地域に選ぶ方法です。この場合は国の中の誰にでも出るので、キーワードで「北海道」や「札幌」を探している人に絞ることになります。
撮影サービスで広告を始めるなら、私は1つ目から試すつもりです。問い合わせの国はばらばらで、国を先に決めるだけの根拠がまだありません。国ごとの数字がたまってから、反応のいい国を別のキャンペーンに分けても遅くない。
来日中の人に出すなら「所在地」にする
日本に来ている人だけに出したいなら、地域を北海道や札幌市にして「所在地」を選びます。関心だけの人が外れるので、海外にいる人に広告費が流れません。
ここを既定のままにしておくと、日本に来る予定もない人が北海道の写真を眺めていただけで、当日予約のお店の広告が表示されることがある。来店してもらう前提のお店なら、ここは必ず切り替えます。
キーワードは英語で、地名とやりたいことを組み合わせる
検索広告のキーワードは、相手が打つ言葉で選びます。訪日客なら英語。「hokkaido photographer」「sapporo photoshoot」「niseko family photos」のように、地名とやりたいことの組み合わせが中心です。
日本語の「北海道 撮影」を入れても、英語で探している人には出ません。逆に日本語のキーワードを足すと、国内の人の検索に広告費が流れる。インバウンドだけを狙うキャンペーンなら、日本語のキーワードは入れない、と決めてしまっていいと思います。
キーワードの選び方やマッチタイプの考え方は、日本語でも英語でも同じです。
言語の設定は、2026年9月から検索広告では広告文の言語で決まる
少し前まで、Google広告にはキャンペーンごとに「言語」を選ぶ欄がありました。英語を選べば英語を使う人に出る、という仕組みです。
これが変わりました。Google広告ヘルプの「ターゲット言語について」によると、2026年9月から、検索キャンペーンではキャンペーン単位のターゲット言語の設定がなくなり、広告の言語をもとに自動でマッチングされます。P-MAXキャンペーンも、検索ネットワークに出る広告には言語の設定が使われなくなる。YouTubeやディスプレイなど、ほかの面には引き続き使われます(出典はGoogle広告ヘルプ「ターゲット言語について」)。
検索ネットワークでの利用者の言語は、検索語句の言語や本人の言語の設定などから判断される、とも書かれています。
つまり、英語の人に出したければ、広告文を英語で書くしかありません。
日本語の広告文を英語のキャンペーンに混ぜておくと、日本語を使う人に出ることになる。英語のキャンペーンには英語の広告文だけ、飛び先も英語のページにします。設定の欄で何かを選ぶより、広告とページの言葉をそろえるほうが今のGoogle広告では大事です。
中国語や韓国語にも出したい場合も同じで、言語ごとに広告文とページを用意します。機械翻訳の下訳はかまいませんが、料金とキャンセル条件の文は、その言語のわかる人に一度読んでもらってください。
Meta広告(Instagram)は、旅行先を決める前の人に見てもらう場所
Google検索の広告は、もう「北海道 撮影」と探している人に出ます。探し始める前の人には届かない。
Instagramの広告は、その手前にいる人に見てもらえます。冬の北海道に行ってみたい、とまだぼんやり思っている段階の人に、雪の中で撮った家族写真のリールが流れてくる。旅行先や、旅先で何をするかを決める材料になるのは、こういう写真や動画です。
撮影サービスのように見た目で選ばれる商品なら、Instagram広告は検索広告と組み合わせる価値があります。使い分けるなら、こんな形になると考えています。
| 媒体 | 届く人 | 広告で見せるもの |
|---|---|---|
| Instagram(Meta広告) | まだ行き先や、旅先でやることを決めていない人 | 撮影した写真や短い動画。季節と場所が伝わるもの |
| Google検索広告 | もう探している人 | 料金の下限、英語対応、予約の受付時期 |
Meta広告の地域は、国や都市で指定できます。指定の種類(住んでいる人、最近その地域にいた人など)や、Advantage+オーディエンスで範囲の外に広がる項目は、Meta広告のターゲティングに書きました。ただ、Metaは地域の選び方の画面をたびたび変えているので、設定する日の画面で確かめてください。
ひとつ脱線します。撮影サービスのFAQには、撮影場所の許可の申請を代わりに出す、という項目も入れました。日本では撮影の申請がFAXや日本語だけで受け付けられていることがあり、海外の旅行者が自分で出すのはまず無理だからです。広告とは関係ない話ですが、こういう一文が予約の決め手になることもあるのだろうと思っています。
広告の飛び先ページには、価格と英語対応とレビューと予約の入口を置く
広告をクリックした旅行者が最初に見る画面で、迷わせないこと。ここが抜けていると、広告費を払って集めた人がそのまま帰ります。
北海道の出張撮影サービスのサイトを作り直す前に、海外の大手の撮影予約サービスを2社、実際に開いて見ました。共通していたのは次の4つです。
- 見出しのすぐ下に「from $◯◯」の価格の下限と、星の評価とレビュー件数
- ヘッダーの下に、撮影した組数・平均評価・レビュー件数を並べた帯
- レビューの一つひとつに「from 国名」
- スマホでは画面の下に固定された予約のバー
撮影サービスのサイトにも、これを取り入れました。トップの最初の画面には、価格の下限と英語で対応できることを明記。料金は4つのプランすべてを税込の日本円で出しています。ドルで書くと為替がずれたときに困るので、実際に払う通貨にそろえた。
広告の飛び先として足りているかは、次の4つで確かめられます。
撮影サービスのFAQには、支払いはクレジットカードか銀行振込で現金は受け付けないこと、連絡はWhatsAppかメールでできること、雨の日や遅刻の扱い、キャンセル料の段階、移動の手段を入れています。どれも日本人のお客さんなら聞かずにわかっていることですが、海外の旅行者は予約ボタンの前でここに引っかかる。
英語のページの作り方そのものはインバウンド向け多言語サイトの作り方に、予約フォームの項目と見積もりの出し方はインバウンド向けの予約フォームに分けて書きました。
広告を出す前に、計測を整えた(北海道の出張撮影サービス)
Google広告もMeta広告も、アカウントはまだありません。先にやったのは、問い合わせがどこから来たのかを自分たちで記録できるようにすること。広告を出してから計測が足りないと気づいても、それまでの広告費の分は取り戻せないからです。
アプリ内ブラウザでは、どこから来たかが落ちることがある
Instagramの投稿やプロフィールのリンクから来た人は、Instagramのアプリの中のブラウザでサイトを開きます。この場合や、Safariの設定によっては、どのサイトから来たかの情報(参照元)がサイトに渡らないことがある。GA4で見ると、参照元が (not set) の問い合わせとして残ります。
インバウンドではここが痛い。Instagramで見つけた旅行者がそのままアプリの中で予約フォームまで進むと、本当に知りたい経路が記録に残らないからです。
そこで撮影サービスのサイトには、流入元を自前で判定する仕組みを入れました。広告のリンクに付く印(Google広告の gclid、Meta広告の fbclid など)や utm のパラメータがあれば、それを優先して「広告から来た」と記録する。ChatGPTやPerplexityのようなAIからの訪問も、別の種類として分けています。
広告を出すときは、リンクに utm を付けておけば、アプリ内ブラウザで参照元が落ちても広告の名前が残ります。
最初に来た経路を90日残しておく
旅行者は、見つけたその日に予約するとは限りません。Instagramの広告で知って、何日か後に旅行の仲間と相談してから、直接サイトを開いて問い合わせる。このとき今回の経路だけを見ると「直接来た人」になり、広告の手柄が消えます。
撮影サービスのサイトでは、初めて来たときの経路を90日間ブラウザに残し、今回の経路と両方を記録しています。問い合わせが届くと、GA4のイベントにも、スタッフに届く通知メールにも、その2つが載る。スタッフは返信を書く前に、この人は最初にどこから来た人かを見られます。
問い合わせに見積もりの金額を付けた
もう1つ、問い合わせの記録(GA4の generate_lead)に、出張エリアと出張料金、見積もりの金額を付けました。予約フォームで選んだプランと撮影場所から、パッケージと出張料金を足した金額です。
広告から見ると、問い合わせはどれも「1件」に見えます。札幌市内で短い撮影の相談も、遠い地域へ出張する長いプランの相談も同じ1件。金額が付いていれば、Google広告にGA4の問い合わせを読み込んだとき、1件ごとの重さの違いを値として渡せます。自動入札が、金額の大きい問い合わせを増やす方向に学べるようになる。
まだ広告を出していないので、この値で入札がどう動くかの数字はありません。それでも、広告を始めた初日から値の付いた問い合わせを渡せる状態にはなっています。GA4の問い合わせをGoogle広告に読み込む手順と、メインとサブの分け方はGoogle広告のコンバージョン設定で説明しています。
問い合わせが届くかも確かめる
当たり前に聞こえますが、これも広告の前にやることです。
撮影サービスのサイトを立ち上げたとき、ドメインのメールの設定(MXレコード)がホスティング先を向いていて、お店側のアドレスに問い合わせの通知が届かない状態がありました。DNSの設定を直して解消しましたが、フォームの画面では送信完了と出るので、作った側も気づきにくい。
広告を出したあとにこれが起きると、広告費を払って集めた問い合わせが誰にも読まれません。テストの問い合わせを自分で送り、通知と自動返信の両方が届くのを見てから始めてください。
10月に入ってから、撮影サービスへの問い合わせは目に見えて増えました。ただ、サイトを作り直した時期と、紅葉から冬の繁忙期が重なっていて、何が効いたのかは切り分けられていません。広告を始めてから同じことにならないように、経路と金額を先に残すようにしたんです。
CONTACT
訪日客向けの広告、始める前に一緒に整理しませんか
来日前と来日中のどちらに出すか、地域と言語の設定、飛び先のページ、問い合わせの数え方まで、広告を出す前に決めることから一緒に詰めます。
ご相談は無料です。そのまま依頼しなくても大丈夫です。
インバウンド広告を代理店に頼むか、自分でやるかの判断
「インバウンド 広告 代理店」で調べると、訪日客向けの広告を専門にうたう会社がいくつも出てきます。頼むかどうかは、次の3つを自分でできるかで決めればいい。
| 確かめること | 自分でできないとき |
|---|---|
| 英語で広告文とページを書けるか | 英語の文を書ける人に、広告文と飛び先のページだけでも頼む |
| 飛び先のページを直せるか | 価格や予約の入口を直せない状態で広告を出すと、広告費が先に減る |
| 問い合わせを広告の成果として数えられるか | 計測が整うまでは広告を出さない。ここは外に頼んででも先に済ませる |
3つとも自分でできるなら、まずは少ない予算で自分で始めてみる。広告の画面の操作自体は、国内向けでも訪日客向けでも変わりません。
頼む場合は、広告のアカウントを自分の名義で持つことを条件にしてください。代理店の名義で作られると、契約が終わったときにそれまでの配信の記録ごと手元に残らない。報告書に、国ごと、来日前と来日中のキャンペーンごとの数字が分けて載るかも、契約の前に聞いておきたいところです。
「インバウンド 広告 事例」で探している方もいると思います。代理店のサイトに載っている事例を見るときは、どの国の人に、来日前と来日中のどちらで出したのかが書いてあるかを見てください。そこが書いていない数字は、自分の商売に当てはめにくい。
手数料の相場と内訳は広告運用代行の費用相場にまとめています。
インバウンド広告を始める前のチェックリスト
11項目。広告のアカウントを作る前に、紙に書き出して埋めておくものです。
- 相手は来日前の人か、来日中の人か。予約が入るのは撮影日や来店日のどれくらい前か
- Google広告の地域は、来日前なら「所在地やインタレスト」、来日中なら「所在地」にしたか
- 日本を除外して、来日中の旅行者まで外していないか
- キーワードと広告文と飛び先のページを、同じ言語でそろえたか
- Instagramで見せる写真や動画に、季節と場所が写っているか
- 飛び先の最初の画面に、価格の下限と英語で対応できることを書いたか
- 支払い、雨の日、遅刻、キャンセル料、移動の費用をFAQに書いたか
- 広告のリンクに utm を付け、アプリ内ブラウザでも経路が残るようにしたか
- 最初に来た経路と、今回の経路の両方を記録できるか
- 問い合わせに見積もりの金額を付けて、広告に渡せるか
- テストの問い合わせを送り、通知と自動返信が届くのを確かめたか
全部埋まってから出す広告は、少ない予算でも何が効いたかを読めます。
Stellariumでは、国内のお店や会社の広告運用を代行しながら、北海道の出張撮影サービスのように訪日客が中心のサイトでは、英日2言語のページ、見積もりの出る予約フォーム、流入元と見積もりの金額を残す計測までを作っています。訪日客向けに広告を始めたいけれど、何から決めればいいかわからない、という段階からでも相談を受けています。
- インバウンド広告は、海外にいる人と日本に来ている人のどちらに出せばいいですか?
- 予約がいつ入るかで決めます。撮影や体験のように何週間も前に予約が入るものは、旅行の計画を立てている海外の人に出します。飲食店や当日予約できる体験のように、着いてから探されるものは、日本に来ている人に出します。両方に出すなら、キャンペーンを分けて数字を別々に見ます。
- Google広告の地域ターゲティングの「所在地」と「所在地やインタレスト」は何が違いますか?
- Google広告ヘルプでは、「所在地」は対象地域にいる可能性が高い人とよく訪れる人、「所在地やインタレスト」はそれに加えて対象地域に関心を示した人も表示対象になると説明されています。既定は「所在地やインタレスト」です。パリに住む人が「大阪 貸切バス」と検索した場合、大阪が関心のある地域とみなされる、という例が載っています。
- 英語の広告を出すとき、言語の設定は何を選べばいいですか?
- Google広告ヘルプによると、2026年9月から検索キャンペーンではキャンペーン単位のターゲット言語の設定がなくなり、広告の言語をもとに自動で合わせる仕組みに変わりました。英語の人に出したいなら、広告文と飛び先のページを英語で書きます。YouTubeやディスプレイなどでは、これまでどおり言語の設定が使われます。
- インバウンド広告は代理店に頼んだほうがいいですか?
- 英語の広告文を書けるか、飛び先のページを直せるか、問い合わせを広告の成果として数えられるかの3点で決めます。どれか1つでも自分でできないなら、その部分だけでも外に頼んだほうが早いです。頼むときは、広告アカウントを自分の名義で持つことを条件にします。
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