
「海外のお客さんが増えてきたから、ホームページを英語にしたい」 「でも、何から手をつければいいのかわからない。翻訳ソフトに通せば終わり?」
観光地でお店や体験サービスをしている方から、こういう相談がよく来ます。
答えから書くと、翻訳は作業の半分もありません。どの言語を主役にするか、URLをどう分けるか、英語版にしか書かない情報は何か。ここを先に決めておかないと、訳した文章が検索にも予約にもつながらないサイトになります。
Stellariumでは今、北海道の撮影スタジオの英日2言語サイトを作っています。お客さんのほとんどは海外からの旅行者。そのサイトで実際に決めたことと、作る途中で見つかった不具合を、順番どおりに並べました。
多言語サイトの作り方は、主役の言語を決めるところから
撮影スタジオのサイトの既定の言語は英語です。英語のページはURLの頭に何も付けず、/sapporo のように置く。日本語のページだけ、/ja/sapporo のように /ja を付けています。
日本の会社のサイトなら日本語が主役で英語がおまけ、という作りがふつうです。でもこのスタジオは、問い合わせの大半が海外の旅行者から来る前提で事業を組んでいる。だったら、何も付かないURLに置くのは英語のほうです。検索結果やSNSで共有されるURLも、英語版のものが中心になります。
逆に、国内のお客さんが主で、海外の人にも読めるようにしておきたい、という会社なら日本語を既定にすればいい。
どちらが正しいかではありません。お客さんの多い言語を、手間のかからない側に置く。それだけです。
訪日客は増えているが、困りごとは減っていない
日本政府観光局(JNTO)の発表では、2025年の訪日外客数は42,683,600人で、過去最多でした(出典はJNTO「訪日外客数(2025年12月推計値)」)。
観光庁が空港で訪日客4,110人に聞いた令和7年度の調査では、「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」は旅行中に困ったことの上位に入り、ここ数年ほぼ横ばいです。多言語表示で困った人に中身を聞くと、多言語対応されていない、表示言語が足りない、が67%。そのあとに、原文より記載量が少ない(24%)、誤訳があった(20%)、固有名詞の表記がそろっていない(9%)が続きます(出典は観光庁「訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート」令和7年度調査結果)。
これは駅や飲食店の案内表示についての調査で、ホームページの話ではありません。それでも、訳がない、訳が短い、訳が間違っている、地名がばらばら、という4つの不満は、そのまま多言語サイトでも起きます。この記事の後半は、この4つをどう避けたかの話でもあります。
言語ごとのURLの分け方は、サブディレクトリが扱いやすい
Googleの多言語サイトのガイドは、URLの分け方として国別ドメイン、サブドメイン、サブディレクトリを挙げています。URLパラメータ(?lang=en のような形)は、おすすめしない扱いです(出典はGoogle検索セントラル「多地域、多言語のサイトの管理」)。
example.jp / example.deen.example.comexample.com/ja/撮影スタジオのサイトはサブディレクトリにしました。ドメインは1つ、サーバーも1つ。日本語版を足すときに、新しく何かを契約する必要がありません。国ごとに会社や在庫が分かれているような大きな事業でなければ、この形で困ることはまずないと思っています。
ガイドにはもう1つ、はっきり書かれていることがあります。ブラウザの言語やIPアドレスを見て、訪問者を別の言語のページへ自動で飛ばさないこと。日本に住んでいる英語話者もいれば、海外から日本語で調べる人もいる。自動で飛ばすと本人が読みたい版にたどり着けなくなります。Googleのクローラーが片方の版しか見られなくなるおそれもある。
自動の転送は入れていません。日本語版を開きたい人は、ヘッダーの「日本語」を押す。英語版に戻りたい人は「English」を押す。それだけです。
翻訳ファイルは、言語ごとに1つずつ持つ
サイトはNext.jsで作り、多言語の部分はnext-intlという部品に任せています。
画面に出る文言はページの中に直接書きません。英語は en.json、日本語は ja.json という翻訳ファイルに、同じ見出し(キー)で並べています。たとえば「撮影の流れ」の1つ目の手順なら、英語のファイルには Send a request、日本語のファイルには「撮影のリクエストフォームの送信」が、同じ名前の欄に入っている。ページ側は「この欄を出して」と頼むだけで、どちらの言語を出すかはURLで決まります。
料金だけは別です。
プランの名前、撮影時間、カット数、税込の金額を1つの表にまとめ、その中に英語と日本語の説明を並べています。金額は1か所にしか書いていないので、値上げしても英語版と日本語版で値段がずれることがない。料金表は、依頼主から届いたExcelの表のうち、サイトに載せる列だけを写したものです。社内向けの数字の列は持ち込まない。
余談ですが、料金表がExcelで届くのは、このスタジオに限らずよくある話。私は表をもらったら、まずサイトに出す列と出さない列に線を引くところから始めます。
作る途中で見つかった不具合
翻訳ファイルを分けておけば安心、とはいきませんでした。10月の初めにサイトを点検したとき、/ja を開いても全部英語で表示されていた。next-intlの新しい版では、言語を受け取る書き方が変わっていて、古い書き方のままだと常に既定の英語になっていたのが原因です。言語の切り替えボタンも、今どちらの言語を見ているかを取り違えていました。
もう1つは見た目ではわからない不具合です。英語のページなのに、HTMLの言語の指定(html lang)が ja のままになっていた。ブラウザの自動翻訳や読み上げは、この指定を見て動きます。
どちらも今は直してある。
翻訳ファイルの欄の数が両方の言語でそろっていても、中身まで訳せているとは限らない。公開前に日本語版のファイルで英字だけの欄を数えてみると訳し漏れがすぐ見つかります。
hreflangとサイトマップで、英語版と日本語版を組にする
検索エンジンから見れば、英語版と日本語版は、似た中身のページが2つあるだけ。この2つは同じページの言語違いです、と伝えるのがhreflangという指定です。
/sapporo/ja/sapporo撮影スタジオのサイトでは、全ページに次の3つを書いています。
| 指定 | 指す先(札幌のページの例) |
|---|---|
| en | 英語版 /sapporo |
| ja | 日本語版 /ja/sapporo |
| x-default | 英語版 /sapporo |
x-default は、英語でも日本語でもない言語の人に見せるページです。このサイトでは英語版にしました。
間違えやすいのは、相手の言語だけを書いてしまうこと。Googleのガイドには、他の言語の版だけでなく、自分の言語の版も一覧に入れる必要があると書かれています(出典はGoogle検索セントラル「ページのローカライズ版についてGoogleに知らせる」)。英語版にも日本語版にも、同じ3行が入る。これで1組です。
書く場所は、ページのhead、HTTPヘッダー、サイトマップのどれでもGoogleは同じように扱います。このサイトでは、ページのheadとサイトマップの両方に書いた。タイトル、説明文、canonical、hreflangを1つのファイルでページごとに管理していて、サイトマップもその一覧から作っています。ページを増やすときに書き忘れる場所が1つで済む。
サイトマップの作り方そのものは、XMLサイトマップの作り方とSEOに、このブログの例と一緒にまとめています。
英語と日本語を同じページに混ぜない
Googleは、ページの言語を、画面に表示されている文章から判断します。html lang やURLは見ていない、とガイドにある。
同じガイドには、1つのページの中身とナビゲーションには1つの言語を使い、原文と訳文を並べて表示しないように、ともあります。英語の下に小さく日本語を添えるような作りは、見た目には親切でも、検索エンジンからはどちらの言語のページか判断しにくくなります。
撮影スタジオのサイトで両方の言語を並べているのは、地名だけ。札幌のページなら「札幌」と「SAPPORO」。これは訳文ではなく、旅行者が現地の看板や地図で目にする表記を見せるためのものです。
インバウンド向けのホームページは、英語版で書き足すものが多い
日本語版をきれいに英訳しても、それだけでは足りない。日本人のお客さんなら聞かずにわかっていることを、海外の旅行者は知らないからです。国内向けのサイトなら省きがちな情報を、撮影スタジオのサイトではこう載せています。
| 載せたこと | 中身 |
|---|---|
| 料金の出し方 | 全プラン税込・日本円で表示。検索結果に出る説明文にも最安のプランの金額を入れた |
| 移動の費用 | 札幌市内は無料。そこから車で何時間かかる地域かで出張料金を分けた |
| 英語が通じない場面 | 車のチャーターは運転手付きだが、運転手は英語が話せないと明記 |
| 日本語ができなくても大丈夫か | 撮影の前も当日も後も英語で対応できると、FAQに書いた |
| 連絡の手段 | メールのほかにWhatsAppで、撮影するカメラマンと直接やりとりできる |
| 支払い | クレジットカードと銀行振込。現金は原則受け付けない。予約時に前払い |
| 雨と遅刻 | 小雨なら傘や屋根のある場所で続ける。30分以上の無連絡の遅刻は返金なしで中止 |
| 予約の時期 | 2か月前から受付。桜・紅葉・雪の時期は早く埋まる |
どれも、旅行の計画を立てる人が予約ボタンを押す前に引っかかるところ。訳すだけでは出てきません。
料金は、10月初めにデザインを見直したときの案ではドル表記の下限を出していました。その後に料金表が新しくなり、全プランを税込の日本円にそろえた。実際に払う通貨で書いておけば、換算は旅行者が自分のカードやアプリでやります。サイトがドルで書いて為替がずれるより、トラブルが少ない、というのが私の考えです。
運転手が英語を話せない、という一文は、書くかどうか少し迷った。でも、書かずに当日わかるほうが困る。観光庁の調査でも、施設のスタッフと英語が通じないことは困りごとの上位に入っています。
地名の表記もそろえてある。札幌、小樽、ニセコ、富良野と美瑛、函館の5つの撮影地ごとにページを作り、どのページでも漢字とローマ字の組み合わせを同じ形で出しています。調査で挙がっていた、固有名詞の表記がそろっていない、という不満への対策です。
FAQは構造化データにも使う
FAQは、予約、支払い、連絡、撮影当日、写真の納品、キャンセルなど10の分類に分かれています。
そのFAQの文章から、FAQPageという構造化データ(検索エンジンにページの中身を伝えるための決まった書式)を自動で作るようにしました。ほかにも、会社の情報、対応できる言語(英語と日本語)、プランごとの料金を、同じ書式で載せています。仮の電話番号や、持っているか確認できなかったSNSのURLは、作り直すときに外した。
構造化データで何が変わるかは、構造化データがSEOに与える影響で詳しく書いています。
予約と問い合わせの導線は、受け取る側の言語で作る
多言語サイトで見落としやすいのが、送ったあとのこと。ここが抜けやすい。
旅行者は英語でフォームを送る。でも、受け取るスタッフは日本語で仕事をしている。撮影スタジオのサイトの予約フォームでは、ここを次のように分けました。
- 旅行者への自動返信は、フォームを送ったページの言語で返す。英語版から送れば英語、日本語版から送れば日本語
- スタジオへの通知は、どちらから届いても日本語の項目名で届く。末尾に「フォームの言語」の欄を付け、英語で返事を書くべき相手かが一目でわかる
- 通知メールに返信すると、そのままお客さんに届く
自動返信には「24時間以内に担当から連絡します」と書き、届かないときの連絡先も添えています。時差のある国から問い合わせた人ほど、返事が来るまでの時間を気にする。
フォームの項目も、旅行者に合わせています。必ず答えてもらうのは、撮影日が決まっているかどうかだけ。第一希望と第二希望の日付、人数、撮影したい場所は空欄でも送れます。旅程がまだ固まっていない段階でも送れるようにしました。
数え方も決めてあります。予約ページへのボタンが押されたら、どのページのどの欄から押されたかをGA4に送る。送信が完了したら、もう1つ別の記録を送る。英語版と日本語版のどちらから予約が来ているかも、ここで見分けられます。成果の数え方は結果の出るホームページの作り方で書いたものと同じ考え方です。
CONTACT
多言語のホームページ、作る前に一緒に整理しませんか
主役の言語、URLの分け方、英語版で書き足す情報、予約フォームの返信まで、作る前に決めることから一緒に詰めます。既存のサイトに英語版を足す改修にも対応します。
ご相談は無料です。そのまま依頼しなくても大丈夫です。
機械翻訳はどこまで使っていいか
下訳なら使っていい、というのが私の考えです。
Googleのガイドが注意しているのは、ナビゲーションやボタンのような決まり文句だけを訳して、本文の大半が元の言語のまま残っている状態です。検索結果に同じ中身のページが2つ出て、利用者を混乱させるからです。
人の目を通すべきなのは、間違えるとお金や予定に関わるところ。キャンセルの条件、料金、集合場所、雨の日の扱い。こういう文章は、機械翻訳のあとに英語のわかる人に読んでもらってください。地名や店名の表記も、ページごとに揺れていないかを確かめます。
Shopifyでネットショップを多言語にする場合は、仕組みが別になります。Shopify側の翻訳機能や通貨の扱いは、Shopifyの越境EC・多言語対応にまとめました。
多言語サイトを作る前に決めることのチェックリスト
最後に、作り始める前に紙に書き出しておくことを並べます。全部埋まってから見積もりを取れば、話は早い。
- 主役の言語はどれか。URLに何も付けないのはどの言語か
- 足す言語はいくつか。最初は英語だけで足りるか
- URLはフォルダで分けるか(example.com/ja/ の形)
- 訪問者を自動で別の言語に飛ばさず、切り替えのリンクを置くか
- 文言は言語ごとのファイルにまとめ、料金のような数字は1か所にしか書かないか
- 全ページに、自分の言語も含めたhreflangとx-defaultを書くか
- サイトマップに両方の言語のURLを載せるか
- 英語版に、支払い方法、連絡手段、雨や遅刻の扱い、移動の費用を書いたか
- 地名や店名のローマ字表記を1つに決めたか
- 問い合わせの自動返信は相手の言語で、社内への通知は社内の言語で届くか
- 機械翻訳した文章のうち、料金とキャンセル条件を人が読んだか
今のサイトを作り直すついでに英語版を足すなら、URLが変わるページの転送も一緒に考える必要があります。そちらは古いホームページをリニューアルすべきかに順番をまとめた。
Stellariumでは、北海道の撮影スタジオのように、Next.jsで英語と日本語のサイトを作り、hreflang・サイトマップ・構造化データの設定から、言語ごとの自動返信が付いた予約フォーム、GA4での予約の計測までを担当しています。既存のサイトに英語版を足したい、今の多言語サイトで検索に出ない言語がある、といった相談も受けています。
- 多言語サイトのURLは、どう分けるのがいいですか?
- Googleのガイドが挙げる方式は、国別ドメイン、サブドメイン、サブディレクトリの3つです。1つのお店や会社が言語だけを増やすなら、example.com/ja/ のようにフォルダで分けるサブディレクトリが扱いやすく、北海道の撮影スタジオのサイトもこの形にしました。?lang=en のようなURLパラメータはおすすめされていません。
- 訪問者のブラウザの言語を見て、自動で英語版に転送してもいいですか?
- Googleのガイドでは、言語バージョンのあいだで自動的にリダイレクトすることは避けるよう書かれています。IPアドレスで中身を変えることも勧められていません。自動で飛ばさず、各ページに別の言語の同じページへのリンクを置いて、本人に選んでもらいます。
- hreflangは何を書けばいいですか?
- 英語版と日本語版のそれぞれに、英語版のURL、日本語版のURL、どちらにも当てはまらない人向けのx-defaultを書きます。相手の言語だけでなく、自分の言語も一覧に入れるのが決まりです。HTMLのhead、HTTPヘッダー、サイトマップのどれで書いても、Googleは同じように扱います。
- 英語版は日本語版をそのまま訳せば足りますか?
- 足りないことが多いです。海外の旅行者は、支払い方法、日本語が話せなくても大丈夫か、雨の日や遅刻したときの扱い、移動にかかる時間と費用を先に知りたがります。撮影スタジオのサイトでは、こうした内容をFAQや料金表に載せています。
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