
「Indeedにもハローワークにも出しているんですよ。それで来ない」
運送会社の社長さんが最初の打ち合わせで口にした言葉です。福生市で25年続いている会社で、条件が特別悪いわけでもない。出発時刻は10通り、週3日からでも働ける、女性も年配の方も在籍している。それでも応募が来なかった。
この記事は、その会社の採用を手伝った経験をもとに、求人に応募が来ない原因を「条件」以外のところから整理したものです。読んでいるのが採用する側の方だという前提で書いています。
応募が来ない求人に共通していること
条件を並べただけの求人票を、求職者の目で読み直してみてください。
職種、勤務時間、月給、休日、勤務地。ここまでは書いてある。ところが、どんな建物で働くのか、休憩はどこで取るのか、隣にいるのは何歳くらいの人なのか、乗る車はきれいなのか。こういう情報はどこにもありません。
求人媒体の入力項目にないからです。
書く欄がないので書かれない。書かれていないので、求職者は「わからない会社」として通り過ぎる。条件の良し悪しが判断される前に、候補から落ちています。応募が来ない会社の求人票を見ると、ほとんどがこの形でした。
もう1つ、採用する側が見落としがちなことがあります。求人媒体では、同じ職種の他社と横一列で比べられるということ。時給や月給の数字が1割低いだけで、中身を読まれる前に外れる。媒体に出すこと自体は必要ですが、媒体の中だけで勝負すると、資本の大きい会社に勝てません。
原因1|職場が想像できない
求職者が応募の前に知りたいことは、はっきりしています。
- 事務所の外観と内観。トイレや休憩室は清潔か
- 実際に乗る車両や使う道具の状態
- 働いている人の年代と男女の比率
- 制服は支給されるのか、自分で揃えるのか
運送会社の打ち合わせで、社長さんに「トラックの写真はありますか」と聞いたら、スマホに何十枚も入っていました。夕方の車庫に並ぶ2tトラック、黒く塗った4t、事務所のデスク。会社の中にはある。求人票に載っていないだけでした。
写真は業者に頼まなくてかまいません。スマホで撮った実物のほうが、きれいなイメージ写真より信用されます。AIで作った画像はやめてください。同じ会社のLPを作ったとき、途中まで仮で入れていたAIの画像を、公開前に全部実写に差し替えました。求職者が見たいのは「きれいな写真」ではなく「自分が働く場所」だからです。
原因2|給与が「モデル」でしか書かれていない
月給25万円〜35万円。この幅の書き方は、読む側からすると何も言っていないのと同じです。
25万円の人はどんな働き方で、35万円の人は何が違うのか。そこがわからないと、自分がどこに入るのか判断できません。
運送会社では、在籍しているドライバー4人分の実績を載せました。月の出勤日数、拘束時間、残業時間、月平均の支給額、最高の支給額。2tでコンビニ配送をする40代男性のアルバイトは月15日出勤で月平均128,000円、4tで朝から夜まで走る30代男性の正社員は月平均372,000円。過去8か月の実績です。
同じ会社でも、働き方でここまで違う。それが見えると、読む人は自分の希望に近い人を探して、その数字で判断します。
原因3|働く時間の枠が固定で、合う人にしか届かない
「4tドライバー、6:00〜15:00、月給◯◯万円」
よくある求人は、枠を先に決めて、その枠に入れる人を探します。枠に入らない人は最初から応募できません。主婦の方、午後から働きたい人、週3日がいい人。全員が候補から外れます。
社長さんの考えは逆でした。
何時に働きたいか、いくら欲しいかを、こちらから先に聞かせてください。
出発時刻が10通りあって、1日の賃金が8,000円から27,000円まで幅があり、週3日から働ける。この会社なら「希望を聞いてから合うコースを探す」ができる。それを求人の中心に置きました。
自社にそこまでの幅がなくても、書き方は変えられます。「6:00〜15:00」だけでなく「他の時間帯も相談可」の一言があるかどうか。それだけで、応募できる人の範囲が変わります。
原因4|届く範囲に、届いていない
採用は通える範囲の人にしか意味がありません。ところが媒体に出しただけでは、その範囲の人の目に入るとは限らない。
無料掲載は、同じ地域の有料求人の下に並びます。ハローワークは、ハローワークで探している人にしか見えません。求人を出したことと、見られたことは別の話。
運送会社では、社長さんに通える範囲を聞くところから始めました。
「立川あたりまで。埼玉の入間あたりもギリギリ」
この範囲の人に向けて、InstagramとFacebookの広告を出しました。広告費は月10万円前後で、まず3ヶ月。広告の単価は同じ地域に広告を出している競合の数で決まるので、都心から離れた地域の運送会社なら競合は多くありません。月5万円以下だと配信の学習が安定しにくいので、10万円前後から始めるのをおすすめしました。
広告と聞くと身構える方が多いのですが、通える範囲の人だけに、会社の写真と給与の実例を見せる。やっていることはそれだけです。地方で広告を出すときの考え方は、地方・田舎での広告運用にまとめてあります。
原因5|応募の入口が重い
応募してみようと思った人が、最後に止まる場所があります。応募の入口です。
電話しか受け付けていない。履歴書を郵送する必要がある。応募フォームの項目が20個ある。どれも、応募する直前の人を1人ずつ落としていきます。
運送会社では、入口をフォームと電話の2つにしました。フォームは1分で終わる項目数。スマホでは画面の下に「電話する」「応募する」のボタンを常に出しています。応募したあとの流れも、入力は1分、担当者から当日中に連絡、面接では実際に乗るトラックも見られる、会社見学だけでも歓迎、と4つのステップで書きました。
応募をためらう理由の多くは「応募したらどうなるのかわからない」です。その先が見えていれば、ボタンを押すまでの距離が縮まります。
LINEを入口にする手もある。電話より気軽で、若い人や女性向きです。やり取りの手間は増えるので、応募が増えてきた段階で足す順番にしました。
先に直す順番
5つ全部を一度にやる必要はありません。お金がかからない順に並べると、こうなります。
- 求人票に「他の時間帯も相談可」「未経験の入社例」など、枠を広げる一言を足す
- スマホで事務所・車両・休憩室を撮り、載せられる媒体には全部載せる
- 在籍している人の給与実績を出せるか、社内で相談する
- 応募の入口を軽くする(電話だけをやめる、フォームの項目を減らす)
- 通える範囲の人に届いているか確認し、届いていなければ広告か採用LPを検討する
1と2は今日できます。3は社内の合意が要るので少し時間がかかる。4と5は、1〜3をやってからで十分です。
それでも来ないときに考えること
ここまで直しても応募が来ない場合、媒体の枠の中で見せられる情報に限界が来ています。
求人媒体は項目が決まっていて、写真の枚数も文字数も制限がある。会社の空気まで伝えようとすると、自分で1ページ作るほうが早い。それが採用LP。運送会社でどう作ったかは、採用LPの作り方に打ち合わせの中身ごと書きました。
時間をかけて資産を作る方向なら、SNSで動画を育てる手もあります。TikTok運用で人材採用を成功させる方法が参考になります。
どちらを選ぶにしても、載せる中身は同じです。職場の写真、給与の実例、働き方の幅、応募したあとの流れ。媒体を変える前に、会社の中にある情報を出し切っているか。まずそこからです。
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