
「Shopifyのサイトを作りたいんですが、いくらですか」
この質問に一言で答えられたことが、私は一度もありません。制作会社の解説記事を何本か開くと、だいたい50万円から200万円と書いてあります。幅が4倍。これでは予算の立てようがない。
ではその幅はどこから来るのか。ページ数ではありません。商品点数でもない。決めているのは、テーマの作り方と、移行するデータの量。この2つだけ。
その内訳を開けます。2026年の5月から8月にかけて、STORESで動いていたECをShopifyへ移した案件があり、どの工程に何日かかったかが手元に残っています。順に書きます。見積書には出てこないのに、必ず発生する作業も含めて。
50万と200万を分けているのは、テーマをどう扱うか
派手さは関係ありません。どこまでテーマを触るか、それだけで作業量が一桁変わる。
Shopifyにはテーマという仕組みがあります。サイトの見た目と構造をまとめた雛形のようなもので、無料のものも有料のものもある。ここをどう扱うかで、作業量が一桁変わります。
| 作り方 | 金額の目安 | 何をするか |
|---|---|---|
| 既存テーマをそのまま | 20万〜50万円 | 無料・有料テーマを入れ、色と文字と画像を差し替える。構造は触らない |
| 既存テーマを作り替え | 50万〜120万円 | テーマを土台に、セクションの追加とLiquidの改修を入れる |
| 独自テーマ | 120万円〜 | 構造から作る。商品ページやカートの挙動も要件に合わせる |
上の帯なら、早ければ2週間で公開できます。下の帯は2か月から3か月。同じ「Shopify構築」という言葉で呼ばれていても、中でやっていることは別物です。
見積もりが安い会社は、たいてい上の帯で話しています。高い会社は下の帯。どちらが正しいということはなく、必要なものが違うだけです。
では、どちらを選ぶのか。判断の基準は1つだけあります。商品ページで見せたいものが、既存テーマの枠に収まるかどうか。
整体茶という健康茶のブランドを手伝っています。買う人は40代から65歳の女性が中心で、注文の97%がスマホから。商品ごとに開発の背景と飲み方のストーリーがあって、そこを読ませないと買われない商品でした。既存テーマの商品ページに写真と説明文を流し込む形では入りきらない。だから独自テーマにしています。
逆に、商品が20点あって写真とスペックで選ばれる雑貨なら、既存テーマで足りる。無理に独自で作っても、かかった費用は売上で返ってきません。
見積書に載らないのに、必ず発生する作業がある
移転でもっとも長くかかったのは、ページを作る時間ではありませんでした。
構築費用の見積書は、たいていページの数で組まれています。トップ、商品一覧、商品詳細、カート、ポリシー類。ここに含まれていない工程が3つあって、そこが実は時間を食う。データの移行、決済と配送の設定、そして計測です。
整体茶の移転で、何が起きたか。
移すデータは、商品と顧客とポリシー文面、そして口コミでした。口コミは既存で674件あり、そのうち391件は移転前のストアで3年かけて積み上がったものです。健康茶という商品の性質上、買う前に他人の感想を読む人がとても多く、星の平均と件数がそのまま売れ行きに効いている。これを捨てて「レビュー0件」から再出発するわけにはいかないので、投稿日も星も本文も、形を崩さずに全部持っていく必要がありました。ここだけで数日かかっています。
移行作業そのものは、CSVを整えて流し込むだけ。問題は、流し込んだあとの検証でした。
公開前に、スマホの文字が147か所小さすぎた
打ち合わせで「文字は大きく」と最初に決めていました。40代から60代が相手だからです。それでも作り込む過程で、いつのまにか若い人向けの詰まった組み方に戻っていた。
公開前にスマホで全ページの文字サイズを測ったら、18px未満の箇所が147ありました。本文が14px、注記が11.5px。読めないわけではないけれど、読む気が失せる大きさです。
小さい値ほど大きく上げる形で、147か所をまとめて引き上げました。10を12へ、11.5を13.5へ、14を16へ。見出しは階層が崩れるので据え置きです。
この作業は見積書のどの行にも入っていません。でもやらなければ、作ったページは読まれずに閉じられる。
カゴ落ちメールが、30日で1通しか送られていなかった
公開してから気づいたものもあります。
カートに商品を入れて買わずに帰る人には、Shopifyが自動でメールを送る機能があります。設定は「有効」になっていました。ところが送信件数を見ると、30日で1件。
原因はチェックアウトの設定でした。マーケティングの同意チェックボックスが「表示しない」になっていて、お客さんが同意する手段そのものが無い。離脱した15件は全員メールアドレスを入力済みだったのに、同意者は0人でした。
さらにメールの中身も古いままでした。店名が「マイストア」、住所は移転前のもの、件名は英語の「Complete your order」。ブランド設定は正しく直してあったのに、メールのテンプレートには古い値が残っていたのです。
設定と文面の直し方はShopifyのメルマガの記事に手順ごと書きました。
購入手続きに入った人の半分が、住所の入力前に消えていた
GA4で30日分のファネルを見たら、購入手続きの開始から住所入力までの通過率が53%でした。ほかの段階は65%から85%通っているので、ここだけ明らかに落ちている。
自分でチェックアウトに入ってみて、すぐ分かりました。上部の金額に送料が出ていない。住所を入れて初めて300円が足される。カートには「あと◯円で送料無料」と出ているのに、チェックアウトに進むとその情報が消えていました。
商品ページの価格のすぐ下に、送料を先に出すブロックを足しました。買う前に知っていれば、住所を入れたあとの「思っていたより高い」が起きない。
ここまでの3つは、どれも制作ではなく検証で見つかったものです。作る時間と同じくらい、確かめる時間がかかる。これが50万と200万を分けているもう1つの要素。
期間はどれくらい見ておけばいいか
5月に着手して、新しいストアで販売を再開したのが8月1日。ちょうど3か月でした。
費用と同じくらい聞かれるのが期間です。ここも作り方で変わります。既存テーマを使うなら2週間から1か月。独自テーマだと2か月から3か月。ただ、この数字は「制作側が手を動かす時間」であって、実際のカレンダーはもう少し伸びます。
伸びる理由は3つあります。
まず、決めることが多い。商品ページに何をどの順で載せるか、送料をいくらにするか、定期便をどう見せるか。これは制作側だけでは決められません。整体茶では週1回の打ち合わせを入れて、実物を見ながらその場で決める形にしました。持ち帰って考えると1週間止まるので、画面を一緒に見て「これでいきましょう」と言ってもらう。この進め方にしてから速くなりました。
次に、外部の都合が挟まります。ドメインの移管、決済の審査、配送業者との契約。どれも申請してから数日から数週間かかる。自分たちの作業が終わっていても、ここで待ちが発生します。
3つめが検証です。上に書いたとおり、移し終えてから触って確かめる時間が要る。ここを1週間も取らずに公開日を決めると、文字サイズや送料表示の問題を抱えたまま売り始めることになります。
スケジュールを引くときは、公開したい日から逆算して、最後の2週間を検証に空けてください。販売再開日を先に告知してしまうと、この2週間が真っ先に削られます。
フリーランスと制作会社、金額以外の違いはどこか
安く上げたい。「Shopify 構築 フリーランス」で検索する人の動機は、たいていこれだと思います。ただ、金額だけで選ぶと外します。
違いは窓口の数。
制作会社に頼むと、ディレクター、デザイナー、エンジニアと担当が分かれます。体制が厚いので大きな案件でも止まらないし、担当が抜けても引き継げる。代わりに、決めたことが実装に届くまでに人を経由します。「ここの文字を大きくしたい」が3人を通る。
フリーランスは一人です。同時に動かせる本数に限りがあって、体調を崩せば止まります。その代わり、広告の数字を見てLPを直す、LPの反応を見て広告文を変える、という往復が同じ日にできる。
私の場合、整体茶では広告運用も同じ人間が持っています。だから「新規の購入率が2%でリピートが8.8%」という数字を見て、新規を取りに行くのではなくカゴ落ちメールと送料表示を直す、という判断ができました。制作だけを請けていたら、この数字は見えていない。
| フリーランス | 制作会社 | |
|---|---|---|
| 費用感 | 同じ内容なら安くなりやすい | 体制のぶん高くなる |
| 決定の速さ | 速い。話した人が作る | 人を経由する |
| 同時進行 | 限りがある | 複数案件を並行できる |
| 止まったとき | 代わりがいない | 引き継げる |
| 広告や計測 | 一人で持てる場合がある | 別会社になることが多い |
どちらが正しいということはありません。月商が大きくて止まると困るなら会社。予算が限られていて、作ったあとも数字を見て直し続けたいなら個人。そういう分け方が現実的です。
アプリを入れるか、作るか
口コミのアプリは入れませんでした。
Shopifyはアプリで機能を足せます。便利な反面、月額が積み上がる場所でもある。整体茶で自分で作ったのは、条件が2つあって既製品では外れたからでした。
1つは既存の674件を承認済みの状態で持ち込みたかったこと。もう1つは、薬機法に触れる表現を公開前に止める必要があったことです。健康茶なので「治る」「効く」といった語が投稿に混ざる。これを店主が見て判断できる形にしたい。
Cloudflare WorkersとD1で、投稿の受け口、薬機法ワードの一次フィルタ、承認画面、商品別の一覧を作りました。投稿されたものは保留に入り、承認すると即掲載、却下すれば出ない。薬機法の語には印が付いて、判断しやすくしてあります。
有料アプリと比べると、年額で数万円から十数万円の差が出ます。件数が増えても料金が変わらないのも大きい。
ただ、これを最初からやるべきかというと、そうでもありません。要件が固まっていないうちは、アプリで回して仕様を確かめるほうが早い。整体茶の場合は、STORESで3年運用して何が必要かが分かっていたから内製にしました。
判断の目安はこうです。月額の合計が年間で十数万円を超えて、かつその機能を今後も使い続けるなら、作ったほうが安くなる。それ未満ならアプリでいい。
CONTACT
Shopifyの構築をお考えですか?
既存テーマの調整から独自テーマの制作、他サービスからの移転、広告運用と計測まで一人で担当します。まずは何が必要で何が要らないかを一緒に切り分けます。
ご相談は無料です。そのまま依頼しなくても大丈夫です。
見積もりをもらったら聞くこと
金額の紙を前にして何を確かめるか。5つあります。
- テーマは既存ですか、独自ですか(金額の帯が決まる)
- データ移行はどこまで含まれますか(商品・顧客・口コミ・レビューの星)
- 決済と配送の設定は誰がやりますか(管理画面の権限が要ります)
- 公開後の確認期間はありますか(実機での検証と計測のチェック)
- 月々かかるものは何ですか(Shopifyの月額、アプリ、ドメイン、保守)
とくに4つめ。ここが抜けている見積もりは安く見えますが、公開したあとに問題が出たときの扱いが決まっていません。カゴ落ちメールの件も、送料の件も、公開してから数字を見て見つけたものです。
もう1つ。管理画面の権限は必ず話題に出してください。Shopifyの自動メールの件名と本文は、APIからは変更できません。管理画面に入らないと直せない場所がいくつかあって、外部に頼むなら権限の付与が前提になる。
公開してからが本番
星の評価が左右逆に登録されていたことに気づいたのは、公開して数日たってからでした。口コミの投稿フォームで星を5つ光らせた人が、★1として保存されていたのです。星の点灯を「選んだ星より後ろを光らせる」という書き方で作っていたのに、並び順を1から5で出していたのが原因でした。見た目は正しく、値だけが裏返っている。
整体茶は2026年8月1日に新しいストアで販売を再開して、その後も毎週のように数字を見て手を入れています。カート追加が二重に計測されていたのを見つけたのも、公開してからでした。
だから見積もりを取るときは、作る費用と同じくらい「作ったあと誰が見るのか」を確かめてください。作って納品して終わり、という形だと、上に書いたような問題は誰にも気づかれないまま残ります。
予算の組み方としては、構築費用の2割から3割を初年度の運用に残しておくと動きやすい。ここが無いと、問題が見つかっても直せません。
Shopifyで売れない原因の切り分け方は別の記事に、公開後の集客の順番はShopifyの集客方法にまとめています。あわせてどうぞ。
よくある質問
- Q. Shopify構築の費用相場はいくらですか?
- 制作会社に依頼する場合は50万〜200万円が一般的な幅です。既存テーマをそのまま使えば20万〜50万円、テーマを部分的に作り替えると50万〜120万円、独自テーマを一から作ると120万円以上になります。金額を決めているのはページ数ではなくテーマの作り方です。
- Q. Shopify構築で見積もりに入っていないのに発生する作業は何ですか?
- 商品・顧客・口コミのデータ移行、決済と配送の設定、メールの文面修正、計測の設置と検証です。実案件では口コミ674件の移行、スマホでの文字サイズ147か所の修正、カゴ落ちメールの同意設定の修正が公開前後に発生しました。制作そのものより、この検証に時間がかかります。
- Q. Shopify構築はフリーランスと制作会社のどちらに頼むべきですか?
- 金額よりも窓口の数で選ぶのが実際的です。フリーランスは制作と広告と計測を同じ人が持つため往復が速い代わりに、同時に動かせる本数に限りがあります。制作会社は体制が厚い代わりに、担当が分かれて判断に時間がかかることがあります。
- Q. 口コミ機能は有料アプリと内製のどちらがいいですか?
- 件数が増えても料金が変わらないため、長く運用するなら内製が安くつきます。実案件では有料アプリと比べて年額で数万円から十数万円の差が出ました。ただし承認フローや表示の仕様を自分で決める必要があるので、最初の1年はアプリで回して要件を固めるのも現実的です。
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