
「うちみたいな会社がTikTokをやって、意味あるんでしょうか」
SNSの相談を受けていると、この質問はよく出ます。踊っている若い人の動画しか流れてこないアプリ、というイメージが強いのでしょう。社内で「やってみたら」と言われたけれど、何から始めればいいかわからない。広告を出すべきかも決めきれない。
この記事は、そういう法人の担当者に向けて書いたもの。数字と仕様は、2026年9月28日にTikTokの公式ニュースルームとTikTok広告のヘルプ、総務省の調査報告書を読み直して確かめたものだけを載せています。
法人がTikTokをやるメリットは「フォロワーがいなくても届く」こと
TikTokを開くと、最初に出てくるのは「おすすめ」のフィードです。
フォローしているアカウントの投稿が並ぶわけではありません。見る人の好みに合いそうな動画が次々に流れてくる。ここに載れば、アカウントを始めたばかりの会社の動画でも、まだ会社を知らない人の目に入ります。InstagramやXでは、まずフォロワーを集めないと投稿が届きにくい。この違いが、法人がTikTokを使う大きなメリットです。
もう1つは、動画で見せられること。
飲食店なら湯気の立つ料理、工務店なら仕上がっていく現場、メーカーなら製品を使っている手元。文章や写真では伝わりにくい中の様子を、15秒でも30秒でも見せられます。Stellariumでは飲食店のSNS運用代行をしていて、撮影は私たちが店舗に伺って行っています。現場で撮ると、店の方が当たり前だと思っている作業ほど画面の向こうでは珍しがられる。これは何度も感じています。
ただし、必ず伸びるとは限らない。
おすすめに載るかどうかは動画の中身と見た人の反応で決まり、会社側が選べるものではないからです。広告費をかけずに届く可能性がある、というのが正確な言い方になります。
数字で見るTikTokの日本の利用者
TikTokの公式ニュースルームでは、日本の月間アクティブユーザー数は約4,950万と発表されています(TikTok Newsroom、2026年6月17日)。2026年5月末時点の自社調べで、TikTokとTikTok Liteの利用者を重複なしで数えた数字です。2025年11月には4,200万を突破したと発表していたので(TikTok Newsroom、2025年11月27日)、半年ほどで伸びています。世界では、2021年9月の時点で毎月10億人以上が使っていると発表されました(TikTok Newsroom、2021年9月27日)。
どの年代が使っているかは、総務省の調査が参考になります。報告書のPDFを開いて、年代別の利用率の表から書き写しました。
| 年代 | TikTokの利用率 |
|---|---|
| 全年代 | 32.5% |
| 10代 | 70.0% |
| 20代 | 52.1% |
| 30代 | 32.0% |
| 40代 | 26.8% |
| 50代 | 25.4% |
| 60代 | 13.0% |
出典は総務省情報通信政策研究所「令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」で、全年代1,500人の調査です。
棒にしてみると、30代から50代はほとんど同じ高さで並びます。30代で32.0%、50代でも25.4%。差がはっきり開くのは20代と30代の間と、50代と60代の間の2か所です。
10代と20代は半分以上が使っている。一方で40代と50代も4人に1人ほどいて、若い人だけのアプリとは言えなくなっています。自社のお客さまの年代とこの表を見比べて、やる価値があるかを判断してください。
始める前に決めること、使える音楽のこと
最初に決めるのは、投稿だけでいくか、広告も出すか。
投稿(オーガニック)は費用がかからない代わりに、何本出しても届かないことがあります。広告は費用がかかる代わりに、見せたい年代や地域に表示される。私が相談を受けたときは、まず投稿を1〜2か月続けて、どんな動画なら見てもらえるかを掴んでから広告を足す順番をすすめています。先に広告から入ると、何が良くて何が悪かったのかがわからないまま予算だけ減っていくからです。
会社で使うなら、アカウントはビジネスアカウントに。
そこで1つ、見落とされがちな決まりがあります。音楽です。TikTokのヘルプには、企業のオーガニック投稿や広告などの商業的な利用では商用音楽ライブラリ(CML)を使う必要があり、一般的な音楽ライブラリを商用利用することはできない、と書かれています(TikTok広告ヘルプ「About the Commercial Music Library」)。CMLには商用利用が許可された曲が100万曲ほど入っています。
投稿で見てもらうための作り方
凝った機材は要らない。スマートフォンの縦画面で撮れば十分です。
TikTokの広告の仕様でも、推奨は縦9:16になっています(TikTok広告ヘルプ「TikTok Auction In-Feed Ads」)。投稿も同じ向きで撮っておくと、あとで広告に回すときに撮り直さずに済みます。
作るときに気をつけているのは次のあたりです。
- 最初の1カットで、何の動画かがわかるようにする(料理なら完成品から見せる、など)
- 音を出さずに見る人もいるので、話している内容は字幕でも出す
- 1本で伝えることは1つに絞る。メニューを5品紹介するより、1品を作る過程を見せる
- 宣伝の言葉は最後に一言だけ。途中で「ご来店お待ちしています」を何度も入れない
- 同じテーマを続けてシリーズにする(「新人が1日1品覚える」など)
業種ごとに見せるものは変わります。
飲食店は調理の音と手元。美容室はカットで髪型が変わっていく途中。小売は商品を使っている場面で、BtoBの会社なら「この業界の人しか知らないこと」を短く説明する動画が作りやすい。どれも、社内の人にとっては毎日見ている光景です。
撮影で苦労するのは実は撮る側より出る側で、最初はみなさんカメラを向けられると固まります。3回目くらいで慣れてくるので、最初の数本は使えなくてもいいつもりで撮るのがいいと思っています。
投稿の頻度は、続けられる本数で決めてください。
毎日出して3週間で止まるより、週2本を半年続けるほうが、どの動画が見られたかを比べられます。どの曜日と時間に出すかも、一般論より自分のアカウントの数字で決めたほうが確実です。
TikTok広告の種類とSpark Ads
TikTokの広告で、中小の会社がまず使うのはインフィード広告です。
おすすめのフィードの動画と動画の間に、広告として出るもの。TikTok広告マネージャーで自分で出せて、入札(オークション)で配信されます。インフィード広告には、普通の広告(Non-Spark Ads)とSpark Adsの2種類があります。
Spark Adsは、TikTokに投稿済みの動画をそのまま広告にする形式です。ヘルプでは「オーガニックのTikTok投稿とその機能を広告に活用できるネイティブ広告」と説明されていて、広告で増えた再生やいいね、フォローは元の投稿に残ります(TikTok広告ヘルプ「About Spark Ads」)。自社の投稿だけでなく、許可をもらえば他のクリエイターの投稿も広告にできる。
投稿で反応が良かった動画をSpark Adsで広げる。
投稿と広告をつなぐ素直なやり方だと思っています。反応の良さが投稿の段階でわかっているので、広告で外す確率を下げられます。
TopViewという枠もある。アプリを開いた瞬間に、ほかのどの動画よりも先に全画面・音ありで表示される広告です。ただしヘルプには、今のところ条件を満たした広告主だけが使え、営業担当への問い合わせが必要と書かれています(TikTok広告ヘルプ「About TopView」)。まずはインフィード広告から考えれば足ります。
3つの違いを1枚にまとめました。
動画の仕様と最低予算
2026年9月28日にヘルプで確かめた内容です。
| 項目 | インフィード広告(Non-Spark) | Spark Ads |
|---|---|---|
| 画面の向き | 縦9:16を推奨(横16:9、正方形1:1も可) | 元の投稿のまま |
| 動画の長さ | 最長10分 | 広告にできるのは10分までの動画 |
| ファイル | mp4・mov・mpeg・3gp・avi、500MB以下 | 元の投稿のまま |
出典はIn-Feed Adsの仕様とAbout Spark Adsです。
予算にも下限があります。ヘルプでは、1日の予算はキャンペーン単位で50ドルを超える額、広告グループ単位で20ドルを超える額が必要とされています(TikTok広告ヘルプ「About Budget」)。ヘルプの表記は米ドルなので、円で請求するアカウントでの下限は、広告マネージャーの入力欄で確かめてください。
広告費の考え方はインスタ広告の費用の記事で課金の仕組みから書いています。SNS広告という点ではTikTokも近いので、予算を決める前に一度読んでみてください。広告をタップした先のページが重いと、せっかくの費用がそこで無駄になります。これは広告のLPが遅いと広告費が上がる話で実測した数字を載せています。
CONTACT
TikTokを始めるか、広告から出すか迷ったら
Stellariumでは、TikTokを含むSNSの運用代行と広告運用をしています。撮影は店舗に伺って行います。今の状況を聞いたうえで、投稿から始めるか広告から出すかを一緒に決めます。
ご相談は無料です。そのまま依頼しなくても大丈夫です。
日本でも始まったTikTok Shop
物を売っている会社なら、TikTok Shopも候補に入る。
TikTokの発表によると、TikTok Shopは2025年6月30日から日本で提供が始まりました(TikTok Newsroom、2025年6月30日)。アプリの中で商品の販売から購入までができるEC機能で、動画やLIVE配信を見た人がそのまま買える。2026年2月の発表では、提供開始から2025年12月31日までの流通総額のうち約70%が、動画やLIVE配信などのコンテンツを起点とした購入だったとされています(TikTok Newsroom、2026年2月3日)。
つまり、ショップを開いただけでは売れにくい。
動画を出し続けることとセットで考える必要があります。すでにShopifyなどで自社のネットショップを持っているなら、TikTokはネットショップの集客の入口の1つとして位置づけるほうが話が早い。出店の条件や手数料は変わることがあるので、TikTok Shopの出店者向けページで最新の内容を確かめてから進めてください。
効果測定で見る数字と、続けるかやめるかの判断
再生数だけを見ていると判断を誤ります。
再生数はおすすめに載ったかどうかでぶれるので、1本ごとの上下に一喜一憂しても次の手が決まりません。目的ごとに見る数字を決めておく。
| 目的 | 見る数字 |
|---|---|
| 知ってもらう | 再生数、フォロワーの増え方 |
| 興味を持ってもらう | 最後まで見られた割合、保存、コメント |
| 来店や購入 | プロフィールの表示回数、サイトでの問い合わせや購入 |
再生やクリックが多くても、その先で止まることはよくあります。TikTokではありませんが、私たちが公開しているMeta広告でドライバーを募集した実例では、6日間で表示12,286回、LP到達496回に対して、成果は2件でした。しかも最もクリックされた動画広告からは成果が出ていません。見られた数と、その先の数は分けて追ってください。
目標の数字は、業種や始めた時期で大きく変わる。よそのアカウントの数字と比べるより、自分のアカウントの直近1か月の平均を出して、それを上回ったかどうかで見るほうが確実です。
サイトでの問い合わせや購入を数えるなら、サイト側に計測の仕組みが要る。考え方は他の広告と同じで、Google広告のコンバージョン設定の記事で書いた「何を成果として数えるか」を先に決める作業は、TikTokでもそのまま使えます。
やめるかどうかは、3か月をひとつの区切りにしています。週2本を3か月続けても、保存やコメントがほとんど付かず、プロフィールも見られていない。そうなったら、見せているものがお客さまの興味とずれていると考えて、テーマを変えるか、TikTok以外のSNSに力を移します。
最初の1か月でやること
- 自社のお客さまの年代と、総務省の年代別の利用率を見比べた
- ビジネスアカウントを作り、プロフィールに何の会社かを1文で書いた
- 使う音楽は商用音楽ライブラリ(CML)から選ぶと社内で決めた
- 続けられる投稿の本数を決めた(週2本など)
- 同じテーマで3本以上つながるシリーズを1つ考えた
- 目的に合わせて、見る数字を1つか2つに決めた
- 1か月後に、反応の良かった動画をSpark Adsに回すか判断する日を決めた
採用のためにTikTokを使いたい場合は、求人ならではの決まりごとがあります。TikTokで採用する方法で、職業安定法の表示のルールも含めて別にまとめました。
- 法人がTikTokをマーケティングに使うメリットは何ですか?
- フォロワーがまだ少ないアカウントでも、おすすめのフィードを通じて動画が届く可能性があることです。TikTokの発表では日本の月間アクティブユーザー数は約4,950万(2026年5月末時点、TikTok Liteを含む)で、総務省の令和5年度調査では10代の70.0%、20代の52.1%が利用しています。若い層に動画で知ってもらいたい会社に向いています。
- TikTokの企業アカウントで流行りの曲は使えますか?
- 商用の投稿に一般の音楽ライブラリは使えません。TikTokのヘルプでは、企業のオーガニック投稿や広告などの商業的な利用には、商用利用が許可された「商用音楽ライブラリ(CML)」を使う必要があるとされています。
- Spark Adsとは何ですか?
- TikTokに投稿済みの動画をそのまま広告として配信する形式です。広告で付いたいいねやフォローは元の投稿とアカウントに残ります。自社の投稿のほか、許可をもらえば他のクリエイターの投稿も使えます。広告にできる動画は10分までです。
- TikTok Shopは日本で使えますか?
- 使えます。TikTokの発表によると、日本では2025年6月30日から提供が始まりました。アプリの中で商品の紹介から購入までが完結するEC機能です。出店の条件は変わることがあるので、TikTok Shopの出店者向けページで最新の条件を確認してください。
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