
「うちの市もインスタを始めたけれど、何を載せればいいのか分からない」 「担当は自分ひとり。炎上したらどうしよう」
自治体でSNSの担当になると、こんな不安を抱えがちです。広報紙やホームページの仕事と兼務で、SNSの専門家がいるわけでもない。そのうえ公式アカウントの一言は、市の発言として受け取られます。
悩むのは当然です。
自治体のSNSは、始める前に運用ポリシーと体制を決めておけば、少人数でも続けられます。国の省庁や自治体の中には、そのルールを公式サイトで公開しているところがある。総務省や浜松市が公開している運用方針、総務省のSNS利用率調査、飛騨市が公式サイトに載せているSNS一覧など、私が実際に読んで確かめた公開情報だけを使い、ポリシー・体制・炎上対策・効果測定の順に並べました。
自治体のSNS活用は「誰に届けるか」でSNSを選ぶ
届けたい相手が使っているSNSを選ぶ。当たり前に聞こえますが、ここを「流行っているから」で決めると、発信が届かないまま続けることになります。
判断の材料になるのが、総務省情報通信政策研究所の令和7年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査。13〜79歳の1,800人を対象にした調査で、2026年6月に公表されました。概要のPDFから、主なSNSの利用率を抜き出します。
| サービス | 全年代 | 20代 | 60代 | 70代 |
|---|---|---|---|---|
| LINE | 92.9% | 97.7% | 92.0% | 77.8% |
| YouTube | 81.5% | 96.3% | 72.6% | 48.5% |
| 54.8% | 82.6% | 36.1% | 15.8% | |
| X | 44.7% | 73.4% | 24.8% | 10.8% |
| TikTok | 36.7% | 61.5% | 21.2% | 11.1% |
| 27.0% | 23.4% | 22.6% | 12.5% |
同じ概要のPDFには10代から70代までの数字が年代ごとに載っているので、線にして並べました。
LINEだけが70代でも8割近くに届いている。ごみの収集日、給付金の案内、防災の連絡のように「住民全員に届いてほしい情報」はLINEが向いている、と数字から言えます。
Instagramは20代で8割を超えます。女性の利用率は63.4%で、男性の46.2%より高い。観光や移住、子育て支援のように写真で伝わる話題を、若い世代に届けたいときはInstagramです。Facebookは30代から50代で3割台と、ほかの世代より高く出ています。
全部のSNSを同時に始める必要はありません。担当が1人なら、LINEと、目的に合ったもう1つから。2つを回せるようになってから増やすほうが、途中で更新が止まったアカウントを残さずに済みます。
自治体のインスタグラム成功例は、公式サイトのアカウント一覧で確かめる
「自治体 インスタグラム 成功例」で調べると、フォロワー数のランキングがたくさん出てきます。ところがフォロワー数は、観光地の知名度や人口に左右される。そのまま自分の自治体の目標にはできません。
私が参考にしているのは、自治体が公式サイトに載せている情報です。何のアカウントを、どの課が、どんなルールで運用しているかは、公式サイトを見れば分かります。
飛騨市は、テーマごとにアカウントを分けて公式サイトに一覧を載せている
岐阜県飛騨市は公式サイトに飛騨市公式メール配信・SNS一覧を載せています(2025年10月1日更新)。2026年9月に私が数えたところ、Instagramは11、Xも11、Facebookは15のアカウントが並んでいました。
市役所の代表アカウントのほかに、防災、消防本部、図書館、文化財、地域おこし協力隊、市のファンクラブなど、テーマごとにアカウントが分かれています。防災だけのアカウントがFacebookとXにあるのは、災害のときに市の情報を探す人が迷わないためだと私は読みました。
一覧をアカウントごとに並べ直すと、次のようになります。
同じ名前のアカウントを1つと数えると、22ありました。Facebook、X、Instagramの3つすべてにあるのは、市役所、ファンクラブ、ヒダスケ!、文化財の4つだけ。残りのうち11は、1つのSNSにしかありません。消防本部はInstagramだけ、図書館はFacebookとX。どのテーマも同じSNSを全部そろえているわけではなく、テーマごとに使うSNSを選んでいる、と私は読みました。LINEは市の公式アカウント1つだけです。
同じ公式サイトによると、飛騨市の総人口は20,949人(2026年9月1日現在)。人口2万人ほどの市が、これだけの数を公式として一覧にしているわけです。
飛騨市は日本広報協会の2026年全国広報コンクールで、広報企画部門の内閣総理大臣賞を受けています。作品名は「人口減少時代の挑戦! 住民とファンでめざす持続可能なまちづくり」。受賞したのはSNSのアカウントではなく広報の企画全体です。それでも、SNSを広報全体の一部として組み込んでいる自治体の例として、一覧ページは見ておく価値があります。
全国広報コンクールに「SNS部門」はない
調べていて意外だったのがここです。
日本広報協会の全国広報コンクールの部門は、広報紙、ウェブサイト、広報写真、映像、広報企画の5つで、SNSだけを評価する部門はない。自治体のSNSを横並びで評価した公的な表彰は、私が探した範囲では見つかりませんでした。
だからこそ「成功例」という言葉を見たら、何を根拠に成功と言っているのかを確かめたいところです。フォロワー数なのか、イベントの参加者なのか、移住相談の件数なのか。目的が違えば、見るべき数字も違います。
自治体のSNS運用ポリシーに書くこと
アカウントを作る前に運用ポリシーを書く。後から書こうとすると、炎上しかけたときに判断の拠りどころがない。
ひな形として読みやすいのが、総務省自身の総務省公式SNS等運用方針です。X、Facebook、YouTube、Instagram、noteの5つのアカウントについて、次の項目を定めています。
| 項目 | 総務省の運用方針に書かれていること |
|---|---|
| 目的 | 業務や取組、行事の更新情報を発信し、理解を深めてもらう |
| 返信 | 原則として返信しない。意見や問い合わせは公式サイトの受付窓口で受ける |
| 発信する情報 | 公式サイトの掲載内容(報道資料など)ほか |
| 緊急時 | 平時と異なる対応が必要なときは、他の政府機関や地方公共団体の情報もリポストする |
| 免責 | 返信やコメント、利用者どうしのトラブルに責任を負わない |
| 削除の基準 | 誹謗中傷、政治・宗教活動、営利目的、差別、虚偽や風評、なりすましなど15項目 |
| 著作権 | 私的使用や引用を除き、無断転載はできない |
迷いやすいのは「返信するかどうか」。
総務省は原則として返信しないと決め、意見の窓口を別に示しています。返信するなら、誰が、いつまでに、どこまで答えるのかを決めておく必要がある。人手が足りない自治体ほど、「専ら情報発信」と決めてプロフィールに書いておくほうが安全です。浜松市ソーシャルメディア活用ガイドラインも、専ら情報発信を行う場合はプロフィール欄などにその旨を書くよう定めています。
浜松市のガイドラインには、もう1つ参考になる決まりがあります。公式アカウントを作るときは担当者と管理者を決め、アカウントの目的、投稿内容、表現の硬さ、決裁の要否を事前に確認し、プロフィール欄で運営主体と目的を明らかにする。そのうえで広聴広報課に届け出て審査を受け、認められたものを市のホームページに載せる、という流れです。
課ごとに勝手にアカウントが増えるのを防ぎながら、住民から見て「これは本物の市のアカウントだ」と分かるようにする仕組みです。飛騨市の一覧ページも、同じ役割を果たしています。
担当者1人でも回るSNSの運用体制
体制で決めることは、実はそれほど多くない。
担当と管理者を分け、決裁の要否を先に決める
浜松市のガイドラインは決裁を不要にする場合でも、管理者が定期的に発言内容を確認するよう求めています。毎回の投稿に決裁を回すと、イベント当日の写真が翌週に出る、ということが起きる。どの投稿は担当の判断で出してよく、どの投稿は課長の確認を通すのかを、ポリシーで分けておきます。
私なら、最初にこう線を引きます。「公式サイトに載った情報を短くして流すものは担当の判断でよい。公式サイトにない新しい情報を出すときは確認を通す」。この一文があるだけで、担当者が迷う場面はぐっと減るはずです。
ネタは庁内から集める
SNSの担当者が自分で全部のネタを探すと、続きません。
各課が出す報道資料、広報紙の原稿、イベントの予定表は、どれもSNSの材料になる。広報紙の締め切りに合わせて各課から原稿が集まる仕組みがすでにあるなら、そこに「SNSにも載せてよいか」の欄を1つ足すのが手軽です。飛騨市の公式サイトの広報のページには「市民ライター・デザインサポーター」や「広報モニター」の案内が並んでいて、住民と一緒に広報を作る仕組みを持つ自治体もあります。
住民の写真を投稿に使うなら、写っている人と撮影者の了解は先に取っておく。浜松市のガイドラインも個人が特定できる写真や映像を投稿する場合は事前に本人の了解を得るよう定めています。
外部に運用を委託するときも、ルールは自治体が持つ
浜松市と鳴門市のソーシャルメディア活用ガイドラインは、どちらも適用範囲に運用を委託された業者を含めています。委託先が投稿を作る場合でも、ポリシーと承認の流れは自治体側が持つ、ということです。
委託するなら、アカウントのログイン情報は自治体の名義で管理し、委託先には必要な権限だけを渡します。担当者の個人メールアドレスでアカウントを登録してしまうと、異動や契約終了のあとにログインできなくなる。これは民間の店舗のSNSでも起きることです。
自治体SNSの炎上対策と、なりすましへの備え
「自治体 SNS活用 失敗事例」と検索する方が知りたいのは、たぶん「何をしたら炎上するのか」でしょう。個別の騒動を並べるより、国と自治体のガイドラインに書かれている「やってはいけないこと」を押さえるほうが確実です。
公式見解でないことを書かない、議論に乗らない
浜松市のガイドラインは禁止事項として次を挙げています。
- 市の公式見解でないもの(意思形成過程にある政策や事業内容)を発信しない
- 伏せ字など、要らぬ詮索を招く書き方をしない
- 同じ内容を何度も繰り返し投稿しない
- 攻撃的な反応があっても冷静に対応し、無用な議論を避ける
ネガティブな評判を見つけたとき、その中に事実誤認があっても、その場の判断で否定や反論をしない。所属長と広聴広報課に連絡する、というのが浜松市の決まり。
職員が個人のアカウントで発信するときの注意は、総務省人事・恩給局の国家公務員のソーシャルメディアの私的利用に当たっての留意点にまとまっています。国家公務員向けの資料ですが、匿名でも過去の発信から所属が特定されるおそれがあること、発言の一部が切り取られて意図しない形で広がることなど、SNSの性質の説明は自治体職員にもそのまま当てはまる。
なりすましと乗っ取りは、手順を決めておく
公式アカウントに心当たりのない投稿が出たときの手順も、浜松市のガイドラインに書かれています。内容を確認し、所属長と広聴広報課へ連絡。画面を保存して記録を残したうえで投稿を削除し、パスワードを変える。投稿に使っていた端末に連携アプリが入っていたら、その連携も解除する。
偽物のアカウントへの備えは、先に書いた公式サイトの一覧です。住民が「このアカウントは本物か」を確かめる先を用意しておけば、なりすましが出たときに「市のSNS一覧に載っているものだけが公式です」と案内できます。
LINEで住民の個人情報を扱うときの注意
LINEは利用率が高いぶん、相談や申請の受付にも使いたくなります。
2021年に内閣官房、個人情報保護委員会、金融庁、総務省が出したLINEサービス等の利用の際の考え方(ガイドライン)の概要資料によると、調査時点で地方公共団体の64.8%(1,788団体のうち1,158団体)が業務でLINEを使っていた。ガイドラインは、公開前提の情報だけを扱う広報なら利用は許容されるとしています。
相談やオンライン申請のように住民の個人情報を扱う場合は別。相談内容などがLINE社のサービス上に保存されない構成にし、情報を保存する委託先のセキュリティを確認する、といった確認事項が示されています。広報用のアカウントと、個人情報を扱う窓口は分けて考えるのが安全です。
自治体SNSの効果測定は、目的ごとに指標を1つ決める
フォロワー数は、効果測定の答えになりません。
増えれば嬉しい数字ですが、移住相談が増えたのか、イベントに人が来たのかは分からない。SNSの目的ごとに、見る指標を1つずつ決めておきます。
| 目的 | 見る指標の例 | どこで数えるか |
|---|---|---|
| 防災・生活情報 | LINEの友だち数、配信の開封 | LINE公式アカウントの管理画面 |
| 観光・移住のPR | 投稿からの公式サイト閲覧、移住相談の件数 | Google アナリティクス、相談窓口の記録 |
| イベントの告知 | 申込フォームの送信数、当日の参加者数 | 申込フォーム、受付名簿 |
| 職員採用 | 採用ページの閲覧、説明会の申込み | Google アナリティクス、申込フォーム |
SNSから公式サイトへの流れを数えるなら、投稿に載せるリンクにUTMパラメータを付けます。Googleのアナリティクス ヘルプの説明どおり、utm_source(どこから)、utm_medium(どんな媒体か)、utm_campaign(どの企画か)を付けておくと、Google アナリティクスのトラフィック獲得のレポートで、どの投稿経由の閲覧かを分けて見られます。
たとえば移住フェアの告知なら、Instagramのプロフィールに置くリンクを ?utm_source=instagram&utm_medium=social&utm_campaign=ijyu_fair のようにしておく。フェアが終わったら、その経由で申込みページが何回見られ、何件送信されたかを確認します。
数字は月に1回、広報紙の締め切りと同じ日に見る。そう決めておけば忘れません。
職員採用でSNSを使う場合、投稿だけで届かない層には、広告を足す手もある。求人をMeta広告で出すときの考え方はMeta広告で求人を出す方法に、応募が集まらないときに先に見直すところは求人を出しても応募が来ない原因に書きました。観光PRの投稿をInstagram広告で押し出すときの費用は、インスタ広告の費用が参考になります。
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ご相談は無料です。そのまま依頼しなくても大丈夫です。
最初の3か月でやること
始める順番に並べ直しました。すでにアカウントがある場合も、上から順に抜けているところを埋めてください。
- 届けたい相手と目的を1つずつ決め、使うSNSを2つまでに絞る
- 運用ポリシーを書く(目的、発信する情報、返信の有無と意見の窓口、緊急時、免責、削除の基準、著作権)
- 担当者と管理者を決め、決裁を通す投稿と通さない投稿を分ける
- プロフィールに運営している課と目的、返信しない場合はその旨を書く
- 公式サイトにSNS一覧のページを作り、公式アカウントを載せる
- 乗っ取りに気づいたときの連絡先と手順を、1枚の紙にして担当の机に置く
- 公式サイトへのリンクにUTMパラメータを付け、月に1回数字を見る日を決める
3か月たったら、見ている指標が動いたかどうかだけを確かめます。動いていなければ、投稿の中身より先に「そのSNSに届けたい相手がいるか」を疑ってください。最初の利用率の表に戻ると、答えが見つかることがあります。
SNSを続けること自体に悩んでいる方は、SNS運用が難しいと感じる理由もあわせてどうぞ。
- 自治体のSNS運用ポリシーには何を書けばいいですか?
- 総務省の公式SNS運用方針では、目的、発信する情報、返信をするかどうかと意見の受付窓口、緊急時の対応、免責事項、利用者の書き込みを削除する基準、著作権の扱いを定めています。浜松市のガイドラインでは、担当者と管理者を決め、プロフィール欄などで運営主体と目的を明らかにすることを求めています。
- 自治体はどのSNSを選べばいいですか?
- 届けたい相手の利用率で選びます。総務省情報通信政策研究所の令和7年度調査では、LINEの利用率は全年代で92.9%、70代でも77.8%あり、生活や防災の連絡に向いています。Instagramは全年代54.8%で20代は82.6%、女性の利用率が男性より高く、観光や移住など写真で伝える発信に向いています。
- 自治体のSNSの効果測定は何を見ればいいですか?
- フォロワー数だけでなく、目的ごとに1つずつ指標を決めます。市の公式サイトへ誘導する投稿なら、リンクにUTMパラメータを付けてGoogle アナリティクスでSNS経由の閲覧や申込みを数えると、投稿が行動につながったかを確かめられます。
- 自治体の公式アカウントでLINEを使うときの注意点は?
- 内閣官房・個人情報保護委員会・金融庁・総務省が2021年に出したガイドラインでは、公開前提の情報だけを扱う広報なら利用は許容されるとしています。相談やオンライン申請のように住民の個人情報を扱う場合は、相談内容などがLINE社のサービス上に保存されない構成にするなど、確認すべき事項が示されています。
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