地方・自治体のSNS運用戦略
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SNS運用地方創生自治体DX

【2025年最新】地方・自治体のSNS運用成功事例|人手不足でも成果を出す具体的戦略

著者アイコンStellarium マーケティング
|2025.03.19

地方自治体によるSNS活用は、今や住民サービスの重要な柱の一つとなっています。しかし、限られた人員・予算・専門知識の中で、どのように効果的な運用を実現すればよいのでしょうか?

総務省の2024年調査によると、全国の自治体の約92%がいずれかのSNSプラットフォームを活用していますが、その多くが「運用リソースの不足」「専門知識の欠如」「効果測定の難しさ」を課題として挙げています。

本記事では、これらの課題を乗り越え、実際に成果を出している全国の自治体の事例を踏まえながら、少ないリソースでも効果を最大化できるSNS運用の具体的手法を解説します。

この記事でわかること

  • 地方自治体がSNSで成果を出すために必要な7つの戦略
  • 限られたリソースでも運用できる効率的な体制づくり
  • 住民エンゲージメントを高める投稿内容の作り方
  • 実際に成功している地方自治体のSNS運用事例
  • 危機管理・炎上対策を含めた自治体特有のリスク管理

地方自治体のSNS活用における現状と課題

地方自治体におけるSNS活用は、この数年で飛躍的に広がりを見せています。住民への迅速な情報発信、地域の魅力発信によるシティプロモーション、そして双方向コミュニケーションの実現など、その活用目的は多岐にわたります。

自治体SNS活用の現状データ

項目2020年2023年2025年(予測)
SNS活用自治体の割合76%92%98%
Instagram活用率32%67%85%
YouTube活用率41%78%90%
専任担当者の設置率12%21%35%

出典:総務省「地方自治体のICT利活用に関する調査」(2024年)および当社独自調査

自治体SNS運用の主な課題

人的リソースの不足

多くの自治体では、SNS運用を広報担当者の業務の一部として位置づけており、専任担当者の配置は約20%にとどまっています。兼務による時間不足が質の高いコンテンツ制作や定期的な投稿の障壁になっています。

専門知識・スキルの欠如

プラットフォームごとの特性理解、効果的なコンテンツ作成、データ分析など、SNS運用に必要な専門知識を持つ職員が少なく、外部研修の機会も限られています。

効果測定と評価の難しさ

フォロワー数やいいね数以外の指標設定や、SNS運用と自治体KPI(移住者増加、イベント参加数など)との相関性の把握に課題を抱えています。

リスク管理の複雑さ

公的機関としての発信責任、個人情報保護、危機管理時の対応など、民間企業とは異なる厳格なリスク管理が求められています。

専門家の見解

「地方自治体のSNS運用における最大の課題は、SNSをただの情報発信ツールと捉えている点です。真価を発揮するには、住民との対話ツールとして双方向コミュニケーションに活用することが重要です。限られたリソースを言い訳にするのではなく、明確な目的と戦略に基づいた運用設計が必要です。」

- 地域情報化アドバイザー 佐藤誠一

こうした課題を抱えながらも、創意工夫によって効果的なSNS運用を実現している自治体が増えてきています。次のセクションでは、そうした成功事例から学ぶべきポイントを見ていきましょう。

成功事例に学ぶ:全国の注目自治体SNS運用

限られたリソースの中でも、創意工夫によって高い効果を上げている自治体のSNS運用事例を紹介します。それぞれの事例から、何が成功の鍵となったのかを分析します。

徳島県神山町
Instagram活用事例

徳島県神山町「#かみやまライフ」プロジェクト

人口約5,000人の小規模自治体ながら、移住促進と地域ブランディングに特化したInstagram運用で、年間移住相談数を前年比300%増を達成。

成功の鍵

  • 地域住民をアンバサダーとして起用したUGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用
  • 週2回の定期投稿と月1回のライブ配信による安定した情報発信
  • 移住者の実体験を可視化する「1Day」シリーズ企画
フォロワー数:12,500人投稿エンゲージメント率:5.8%担当者:2名(兼務)
佐賀県武雄市
クロスプラットフォーム戦略

佐賀県武雄市「TAKEO DX PROJECT」

Twitter、Instagram、YouTube、TikTokを組み合わせた統合的SNS戦略で、災害情報から観光振興まで幅広い情報発信を効率的に実現。

成功の鍵

  • プラットフォームごとのコンテンツ最適化と横断的な情報設計
  • クロスポスト運用による担当者の工数削減システム
  • シンプルな投稿テンプレートによる持続可能な運用体制
Twitter:22,000フォロワーInstagram:14,300フォロワーYouTube:5,800登録者
東京都渋谷区
若年層向けコミュニケーション

東京都渋谷区「SHIBUYA YOUTH」プロジェクト

10-20代向けの区政情報発信チャンネルとして、TikTokとInstagramを活用。若者の区政参画率を1年で15%向上させた。

成功の鍵

  • 若手職員5名によるプロジェクトチーム結成と裁量権付与
  • 区内学生インターンの積極活用によるZ世代視点の取り込み
  • 親しみやすいキャラクター設定と一貫したトーン&マナー
TikTok:42,000フォロワー平均視聴完了率:68%若年層エンゲージメント:前年比350%増

成功事例から見る共通ポイント

  1. 1

    明確な目的設定と計測可能なKPI

    成功している自治体は、「認知拡大」「エンゲージメント向上」といった曖昧な目標ではなく、「移住相談数」「イベント参加者数」などの具体的指標を設定している。

  2. 2

    住民参加型のコンテンツ制作

    行政からの一方的な情報発信ではなく、住民や地域の事業者を巻き込んだコンテンツ制作により、リソース不足を補いながら多様な視点を取り入れている。

  3. 3

    継続性を重視した運用設計

    担当者変更や予算変動に左右されない、シンプルで再現性の高い運用フローとテンプレート化を実現している。

  4. 4

    プラットフォームの特性理解と使い分け

    各SNSの特性を深く理解し、伝えるべき内容や対象者に合わせたプラットフォーム選定と最適化を行っている。

これらの成功事例からわかるように、自治体のSNS運用で重要なのは高度なテクニックや多額の予算ではなく、明確な目的設定と継続的な運用体制の構築です。次のセクションでは、これらの成功事例を踏まえた具体的な戦略を紹介します。

少ないリソースで効果を出す7つの戦略

地方自治体における人員・予算・専門知識の制約を踏まえた上で、効果的なSNS運用を実現するための具体的な戦略を解説します。

1

明確な目的と数値目標の設定

漠然と「SNSで情報発信する」という目標ではなく、具体的な行動目標と数値目標を設定することが第一歩です。

実践ポイント

  • 各SNSチャンネルに具体的な目的(例:Twitterは緊急情報発信、Instagramは移住促進)を設定
  • 具体的な数値目標(例:イベント参加者前年比110%、移住相談数月10件など)を定める
  • 目標達成のための中間指標(投稿頻度、返信率など)を設定する

フォロワー数や「いいね」数はKPIとして設定すべきですが、それだけでなく実際の住民行動に紐づく指標も設定しましょう。

2

既存コンテンツの活用と再構成

自治体には既に多くの情報資源が存在します。これらを効率的に再構成し、SNS向けに最適化することで、少ない工数で質の高いコンテンツを生み出せます。

実践ポイント

  • 広報誌、パンフレット、既存写真などを活用し、SNS向けに短く編集
  • 過去の写真データを季節・テーマ別に整理し、定期的に再活用
  • 住民向け説明資料をインフォグラフィックに変換し視覚的に訴求

あるプラットフォームで作成したコンテンツは、異なるプラットフォーム向けにフォーマットを変更して再利用しましょう。

3

住民参加型コンテンツの活用

地域住民や事業者が生成するコンテンツ(UGC)を活用することで、担当者の負担軽減と多様なコンテンツ確保が同時に実現できます。

実践ポイント

  • 地域の写真を集めるハッシュタグキャンペーンを定期的に実施
  • 地域の事業者、団体と協力し、定期的なコンテンツ提供を依頼
  • 地域のインフルエンサーやブロガーとの連携体制を構築

UGCを活用する際は、事前に利用許諾の取得方法や著作権の扱いなどをルール化しておきましょう。

4

投稿テンプレートと運用カレンダーの整備

テンプレート化と計画的な運用設計により、担当者変更や多忙期でも一定品質のコンテンツを安定して発信できる体制を構築します。

実践ポイント

  • 各種お知らせ、イベント案内などのテンプレートを複数用意
  • 曜日・週ごとの投稿テーマを決めた運用カレンダーを作成
  • 季節イベントや定例行事を年間カレンダーに事前登録

無料のスケジューリングツールを活用して、事前に投稿を予約しておくことで、繁忙期でも投稿が途切れる心配がありません。

5

庁内横断的な情報収集体制の構築

各部署が持つ情報・コンテンツを効率的に集約する仕組みを作ることで、少ない担当者でも多様なコンテンツを確保できます。

実践ポイント

  • 各部署の「SNS情報提供担当」を指定し、定期的な情報提供を依頼
  • 簡単に入力できる「SNS掲載依頼フォーム」を庁内に整備
  • ネタ切れ防止のための「投稿アイデアストック」を部署横断で作成

各部署で実施するイベントや取り組みを事前に共有する仕組みを作ると、SNSネタを計画的に確保できます。

6

無料・低コストツールの活用

予算制約がある中でも、無料または低コストのツールを活用することで、効率的かつ魅力的なSNS運用が可能になります。

実践ポイント

  • Canvaなどの無料デザインツールでテンプレートを作成・活用
  • Buffer、Hootsuite等の基本機能を活用した投稿スケジューリング
  • Google Analyticsと連携した効果測定と改善サイクルの確立

AIツールも積極的に活用し、文章校正、画像生成、アイデア出しなどの効率化を図りましょう。

7

運用マニュアルと継続可能な体制整備

担当者が変わっても一定の品質を維持できるよう、マニュアル整備と持続可能な運用体制の構築が重要です。

実践ポイント

  • 運用ポリシー、投稿基準、危機対応などをまとめたマニュアル作成
  • 主担当+副担当の複数体制による運用リスク分散
  • 月次PDCA会議による継続的な改善サイクルの確立

職員の世代交代や人事異動を見据え、SNSノウハウを組織的に蓄積・共有する仕組みを構築しましょう。

これらの戦略は、必ずしもすべてを一度に実施する必要はありません。自治体の状況や課題に合わせて優先度を設定し、段階的に導入していくことが重要です。次のセクションでは、具体的なプラットフォーム選定と特性理解について解説します。

目的別プラットフォーム選定と特性理解

各SNSプラットフォームにはそれぞれ特性があり、伝えたい内容や目的に応じて適切に選定・活用することが重要です。自治体の多くがリソース不足に悩む中、すべてのプラットフォームを同時に運用することは現実的ではありません。

まずは自治体の状況や目的に合わせて優先順位をつけ、効果的に運用できるプラットフォームから始めることをおすすめします。

プラットフォーム特性と強み自治体での活用目的運用難易度
Twitter
(X)
  • リアルタイム性が高い
  • テキスト中心のシンプルな投稿
  • ハッシュタグによる拡散性
  • リツイートによる情報拡散
  • 緊急・防災情報の発信
  • イベント・行政サービスの告知
  • リアルタイム情報の発信
  • 住民からの問い合わせ対応
比較的低い
Instagram
  • ビジュアル重視のプラットフォーム
  • 若年層〜中年層の利用率が高い
  • ストーリーズ機能で一時的な情報発信可能
  • ライブ配信機能あり
  • 地域の魅力・景観の発信
  • 移住促進・シティプロモーション
  • イベント風景のリアルタイム共有
  • 地域の特産品や観光スポットのPR
中程度
Facebook
  • 30〜50代の利用率が高い
  • 詳細な情報発信が可能
  • イベント作成・参加者管理機能
  • コミュニティグループの運営可能
  • 公式情報の発信
  • 地域コミュニティの形成・活性化
  • 住民参加型イベントの告知・運営
  • パブリックコメント収集
比較的低い
YouTube
  • 動画コンテンツのプラットフォーム
  • 幅広い年代層が利用
  • アーカイブとしての機能性
  • ライブ配信も可能
  • 議会中継・首長記者会見の配信
  • 観光PR・地域紹介動画
  • 行政サービスの利用方法説明
  • 防災・安全に関する啓発動画
やや高い
TikTok
  • Z世代・若年層の利用率が高い
  • 短尺・縦型の動画フォーマット
  • トレンドに乗りやすい拡散性
  • 音楽・エフェクトを活用した表現
  • 若年層向け情報発信
  • 地域の魅力を短く訴求
  • 伝統文化の現代的発信
  • 職員採用・若者向け施策のPR
やや高い
LINE
  • 日本での浸透率が非常に高い
  • プッシュ通知による高い到達率
  • 年齢層を問わず幅広い利用者
  • 公式アカウント機能が充実
  • 緊急・防災情報の発信
  • 行政サービス案内
  • ごみ収集日程などのリマインド
  • 住民向けアンケート実施
中程度

目的に合わせたプラットフォーム選定のポイント

優先すべき用途で選定する

「何となくTikTokを始めたい」ではなく、「若年層への移住促進情報発信」など明確な目的を先に設定し、それに最適なプラットフォームを選定します。複数の目的がある場合は、最も重要な目的を優先しましょう。

ターゲット層の利用率で判断する

伝えたい相手がどのSNSを利用しているかを基準に選びます。例えば子育て層向けの情報はInstagramが、シニア層向けはFacebookが効果的な場合が多いでしょう。

運用リソースと難易度で判断する

動画編集スキルやデザイン力が必要なプラットフォームは、それに見合うリソースが確保できるかを考慮します。特にTikTokやYouTubeは制作工数が大きいため、人員や予算との兼ね合いで判断しましょう。

住民の利用実態を調査する

全国平均のSNS利用率だけでなく、可能であれば住民アンケートなどで地域特有のSNS利用傾向を把握した上で選定することが望ましいでしょう。

自治体目的別 おすすめプラットフォーム組み合わせ

防災・緊急情報発信中心の場合

優先度高:Twitter、LINE

迅速性と到達率の高さを重視した組み合わせ。緊急時にリアルタイムで情報を届けることが可能。

移住促進・シティプロモーション中心の場合

優先度高:Instagram、YouTube

視覚的な魅力発信と詳細情報提供を組み合わせ、地域の魅力を多角的にアピール可能。

若年層の地域参画促進が目的の場合

優先度高:TikTok、Instagram

Z世代・若年層の利用率が高いプラットフォームを組み合わせ、若者の興味を引く内容発信が可能。

住民向け行政サービス情報発信が中心の場合

優先度高:Facebook、LINE

詳細な情報発信と確実な到達を重視したプラットフォームの組み合わせ。地域コミュニティの形成にも有効。

プラットフォームの選定後は、各SNSの特性を理解し、それぞれに最適化したコンテンツ制作と運用が重要です。特に複数のSNSを運用する場合は、同じ内容をそのまま配信するのではなく、各プラットフォームの特性に合わせた調整が効果を高めます。次のセクションでは、自治体に適したコンテンツ戦略について解説します。