飲食店のマーケティング戦略ガイド
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マーケティング飲食店集客戦略

飲食店マーケティング戦略の最前線|集客からリピーター獲得まで徹底解説

著者アイコンStellarium マーケティング
|2025.03.14

コロナ禍を経て大きく変化した飲食業界。いま成功している店舗には明確な共通点があります。それは「戦略的なマーケティング」の実践です。

「開店当初は来客数も多かったのに、最近は客足が遠のいている…」 「SNSを始めたけど、思うような成果が出ない…」 「周辺に競合店が増えて、差別化が難しくなってきた…」

こんな悩みを抱える飲食店オーナーは少なくありません。実は、多くの飲食店が「感覚」や「経験」だけに頼ったマーケティングを行っていることが大きな課題です。データに基づいた戦略的なアプローチがなければ、せっかくの努力も空回りしてしまいます。

私はこれまで50店舗以上の飲食店のマーケティングに携わってきました。その経験から言えるのは、成功する店舗と停滞する店舗の差は「体系的な戦略の有無」にあるということ。このブログでは、飲食店が実践すべき効果的なマーケティング戦略を、具体例とともに解説していきます。

この記事でわかること

  • 飲食店が今すぐ実践できる効果的なマーケティング戦略
  • デジタルとリアルを組み合わせた集客施策の具体例
  • 顧客心理を理解した効果的なリピーター獲得の手法
  • 低予算でも取り組める地域密着型マーケティングの実践法
  • 先進的な飲食店に学ぶ、差別化とブランディングの秘訣

飲食店マーケティング成功の土台となる3つの要素

多くの飲食店が広告やSNSなど「戦術」レベルの施策からマーケティングを始めてしまいます。しかし最初に取り組むべきは、もっと根本的な「戦略」レベルの設計です。ここでは、まずマーケティングの土台となる3つの要素について解説します。

1. 明確なターゲット設定

「誰にでも愛される店」を目指すことは、実は「誰からも選ばれない店」になるリスクを高めます。成功している飲食店は例外なく、明確なターゲット顧客を設定しています。

ターゲット設定の具体例

曖昧な設定(避けるべき)

「30〜50代の男女」「美味しい料理を求める人」

具体的な設定(理想的)

「30代前半の共働き夫婦。時間に追われる日常の中で、特別な日には質の高い体験と料理を求めている」「健康志向が高く、食材の産地や調理法にこだわる35〜45歳の女性。SNS発信も積極的に行う」

私が支援したある和食店では、ターゲットを「食にこだわりを持つ30代後半〜40代のビジネスパーソン」に絞り込んだことで、メニュー構成からインテリア、接客サービスまでが一貫し、客単価が1.5倍に向上しました。ターゲットを絞ることは、一部の顧客を失うことではなく、特定の顧客からの強い支持を得ることなのです。

2. 独自のポジショニング

競合店が多い中で埋もれないためには、明確な「立ち位置」が必要です。あなたの店舗が顧客にとってどんな存在か、競合と比べてどこに優位性があるのかを明確にしましょう。

商品ポジショニング

「最高品質の素材と伝統技法にこだわるプレミアム和食」「本場の味を手頃な価格で提供する親しみやすいエスニック料理」など、料理のスタイルや特徴による差別化

体験ポジショニング

「料理人との会話も楽しめる臨場感あるカウンター席が特徴」「家族全員で楽しめるインタラクティブな食体験を提供」など、店内体験による差別化

価値観ポジショニング

「サステナブルな地産地消を実践するエシカルレストラン」「職人技を次世代に伝える伝統と革新の懐石料理」など、理念や価値観による差別化

課題解決ポジショニング

「忙しいビジネスパーソンに15分以内で提供する高品質ランチ」「アレルギー対応に特化した安心して食べられる専門店」など、顧客の悩みを解決する差別化

例えば、ある寿司店は「気軽に楽しめる高級店」というポジションを確立するため、ランチタイムは手頃な価格のセットメニュー、ディナーは本格的なおまかせコースを提供。このシンプルな戦略により、幅広い客層を取り込みながらも、高級店というブランドイメージを維持することに成功しました。

3. 顧客体験の設計

飲食店の価値は「料理」だけではありません。顧客が店舗を知ってから、来店、食事、会計、そして帰宅後までの「体験全体」をデザインすることが重要です。

顧客体験マップの例

1

認知フェーズ

SNS・口コミ・検索

2

予約フェーズ

サイト・電話対応

3

来店フェーズ

入店・着席案内

4

飲食フェーズ

注文・提供・食事

5

事後フェーズ

会計・帰店後

各フェーズで顧客が何を求め、何に不満を感じるかを分析し、一貫した体験を提供することが重要です。特に「最初の印象」と「最後の印象」は記憶に残りやすいため、重点的に設計しましょう。

あるカフェでは、来店時にスタッフが顧客の名前を覚え、2回目以降の来店で名前で挨拶するという単純な施策を導入。この「認識されている」という体験が顧客満足度を大きく向上させ、リピート率が40%向上しました。顧客体験は細部に宿ります。

Key Point

これら3つの要素「ターゲット設定」「ポジショニング」「顧客体験設計」は、マーケティング戦略の基盤です。これらが明確になってはじめて、SNS運用や広告出稿などの「戦術」が効果を発揮します。

今すぐ実践できる飲食店の効果的な集客戦略

基本的な戦略が固まったら、次は具体的な集客施策を実行していきましょう。ここでは、費用対効果が高く、すぐに始められる施策を紹介します。

1. Googleビジネスプロフィールの最適化

現在、飲食店への集客で最も重要なプラットフォームと言えるのが「Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)」です。実際、ある調査では消費者の70%以上が飲食店を探す際に「Google検索」や「Googleマップ」を利用すると回答しています。

Googleビジネスプロフィールの重要性を示すグラフ
※イメージです。実際のデータとは異なる場合があります。

Googleビジネスプロフィール最適化のポイント

1

高品質な写真を定期的に追加

店内の雰囲気、料理、スタッフの様子など様々な角度から撮影した写真をアップロード。毎週最低1枚は新しい写真を追加しましょう。

2

投稿機能を活用

新メニュー情報、イベント、特別プロモーションなどを定期的に投稿。検索ユーザーの目に留まりやすくなります。

3

レビューへの返信

良いレビューも悪いレビューも、すべて24時間以内に返信。特に悪いレビューこそ丁寧に対応することで、潜在顧客の印象が大きく変わります。

4

Q&A機能の活用

よくある質問と回答を事前に自分で投稿しておくことで、検索ユーザーの疑問を解消し、来店の決め手になります。

5

営業情報の正確な更新

営業時間、定休日、特別営業日などを常に最新の状態に保つことで、顧客のストレスを軽減します。

私が支援したあるラーメン店では、Googleビジネスプロフィールの最適化により、3ヶ月で検索表示回数が45%増加、クリック数が60%増加、そして実際の来店数が25%向上しました。無料で取り組める施策の中では、最も効果が高いと言えるでしょう。

2. インスタグラムの戦略的活用

飲食店のSNSといえば「Instagram」が王道です。視覚的に魅力を伝えられる点が、料理店との相性が良いのです。しかし、ただ料理の写真を投稿するだけでは効果は限定的。戦略的な運用が必要です。

投稿コンテンツの黄金比率

40%:料理の魅力

商品写真、調理過程、特別な食材など

30%:店舗の雰囲気

店内装飾、スタッフの様子、イベントなど

20%:ストーリー要素

食材の仕入れ風景、シェフの思い、開業秘話など

10%:プロモーション

キャンペーン、期間限定メニュー、クーポンなど

効果的なハッシュタグ戦略

超ローカルタグ(3〜5個)

#渋谷カフェ #表参道ランチ #二子玉川ディナー など

ジャンルタグ(3〜5個)

#イタリアン #パスタ #ワイン好き など

ムードタグ(2〜3個)

#デートにおすすめ #女子会 #記念日ディナー など

オリジナルタグ(1個)

#あなたの店名 - 顧客の投稿にも使ってもらうことで拡散につながる

※ハッシュタグは合計10〜15個程度に抑えるのが理想的です

インスタグラムでは「定期投稿」よりも「質の高い不定期投稿」の方が効果的です。週に2〜3回、しっかり準備した質の高い投稿を行うことで、エンゲージメント率が向上します。また、ストーリーズ機能を活用して日常的な雰囲気を伝えることも重要です。

実践事例:回転寿司店のインスタグラム改革

Before

毎日同じアングルで撮影した寿司ネタの写真を投稿。フォロワー数は停滞し、エンゲージメント率は1%未満。

After

コンテンツの多様化を実施:

  • 職人の技術を見せる短動画
  • 市場での仕入れ風景
  • 季節ごとの特別メニュー提案
  • 顧客投稿のリポスト

結果:6ヶ月でフォロワー数が3.8倍に増加、エンゲージメント率5.2%を達成。Instagram経由の来店が全体の22%を占めるようになった。

3. 地域密着型マーケティングの展開

飲食店にとって「地域」との関係性構築は、安定した集客につながる重要な要素です。首都圏の店舗でも、実は来店客の70%以上が店舗から2km圏内に住む顧客という調査結果もあります。

施策内容メリット初期コスト
地域イベント参加地域の祭りやマルシェに出店地域住民との直接的な接点を創出中(5〜10万円)
地域企業とのコラボ近隣店舗や企業と相互送客の仕組み構築新規顧客獲得コストの低減低(〜3万円)
ご近所割引徒歩圏内の住民向け特別メニューや割引平日や閑散時間帯の集客力向上低(〜3万円)
地元食材の活用地元生産者との連携によるメニュー開発差別化とストーリー性の付加中〜高(調達コスト)
地域メディア活用地域情報誌やローカルFMなどへの出演地域内での認知度向上低〜中(0〜5万円)

私が支援した地方の洋食店では、地元農家と連携した「〇〇町産野菜フェア」を定期開催することで、地域メディアに取り上げられる機会が増加。その結果、平日ランチの客数が1.4倍に増加しました。低予算で始められる地域密着施策は、長期的な顧客基盤構築に効果的です。

リピーター獲得と顧客生涯価値を高める戦略

新規客を集めるだけでなく、既存顧客の再来店を促す「リピーター戦略」は、マーケティングコストを抑えながら売上を安定させる鍵となります。実際、新規顧客の獲得コストはリピーターの維持コストの5〜10倍とも言われています。

リピーター獲得のための5つの戦略
1

顧客データベースの構築

顧客の好みや来店履歴を記録し、パーソナライズされたサービスを提供。何度も訪れる価値を創出する。

2

メンバーシップ制度

会員限定の特典やポイント制度を導入し、再来店のインセンティブを提供する。

3

メニューの定期的な更新

季節限定メニューや定期的な新商品開発により、顧客の「また来たい」という気持ちを喚起する。

4

特別イベントの開催

食事会、ワークショップ、試食会など、通常とは異なる体験を提供し、コミュニティ感を醸成する。

5

ストーリーテリング

料理や店舗の背景にあるストーリーを伝えることで、顧客との感情的なつながりを構築し、単なる「食事の場所」以上の価値を提供する。

実践事例:顧客生涯価値を3倍にした居酒屋チェーン

ある居酒屋チェーンでは、顧客データベースとLINE公式アカウントを連携させた独自のリピーター戦略を展開しました。

施策内容

  • 初回来店時にLINE登録を促し、誕生日や好みのメニューを登録
  • 月に1度の頻度で、過去の注文履歴に基づいた「あなたにおすすめ」メニューを配信
  • 来店頻度に応じて4段階のランク制度を導入(ブロンズ〜プラチナ)
  • 上位ランク会員には、シェフからの特別メニューや優先予約枠を提供

結果

  • LINE会員の平均来店頻度:月1.2回 → 月2.7回に増加
  • 会員顧客の年間消費額:約32,000円 → 約89,000円に増加
  • 上位ランク(ゴールド・プラチナ)会員の口コミ投稿率:68%(非会員の4.5倍)

ポイント

単に「ポイントをためる」だけの仕組みではなく、「特別感」や「パーソナライズされた体験」を提供することで、顧客のロイヤルティを高めることに成功しました。

このようなリピーター戦略は、初期投資は必要ですが、長期的に見れば非常に費用対効果の高い施策です。既存顧客の再来店率が10%向上するだけで、多くの飲食店では売上が20〜30%増加すると言われています。

小さく始めるリピーター戦略のステップ

  1. 1

    お客様情報の収集から始める

    まずは基本的な顧客情報(名前、メールアドレス、誕生日など)の収集の仕組みを作りましょう。紙のアンケートでも、デジタルでも構いません。

  2. 2

    コミュニケーションチャネルの確立

    LINE公式アカウントやメールマガジンなど、継続的にコミュニケーションできるチャネルを1つ選び、集中的に育てましょう。

  3. 3

    顧客体験の「特別な瞬間」を設計

    誕生日特典や、来店回数に応じた特典など、顧客が「特別扱いされている」と感じられる体験を少なくとも1つは設計しましょう。

  4. 4

    データ分析と改善の繰り返し

    どのお客様がどのくらいの頻度で来店しているか、どのメニューを好んでいるかなどを分析し、施策を継続的に改善していきましょう。

Key Point

リピーター獲得において最も重要なのは「一貫性」です。一度始めたら継続的に運用し、顧客との関係性を徐々に深めていくことが成功の鍵となります。

まとめ:飲食店マーケティング成功のための実践ステップ

マーケティングは一朝一夕で成果が出るものではありません。しかし、正しい順序で着実に進めることで、確実に成果につなげることができます。この記事で解説した内容を整理すると、以下の流れで進めるのが効果的です。

  1. 1

    基盤づくり(1〜2週間)

    • ターゲット顧客の明確化
    • 独自のポジショニングの確立
    • 顧客体験の設計
  2. 2

    デジタルプレゼンスの最適化(1ヶ月)

    • Googleビジネスプロフィールの充実
    • インスタグラム運用の戦略策定と実行
    • 自社サイトやオンライン予約システムの整備
  3. 3

    集客施策の実行(2〜3ヶ月)

    • 地域密着型マーケティングの展開
    • 集客イベントの企画と実施
    • 初回来店特典など新規顧客獲得施策の実施
  4. 4

    リピーター獲得の仕組み構築(3〜6ヶ月)

    • 顧客データベースの構築
    • 会員制度やポイントシステムの導入
    • 顧客との継続的なコミュニケーション施策
  5. 5

    分析と改善の継続(常時)

    • 各施策の効果測定
    • 顧客からのフィードバック収集
    • データに基づく継続的な改善

飲食店のマーケティングは、単発のキャンペーンや広告よりも、こうした体系的なアプローチが重要です。全ての施策を一度に始める必要はありません。できることから少しずつ取り組み、継続的に改善していくことが、長期的な成功につながります。

最後に、マーケティングはあくまで「手段」であり「目的」ではありません。どんなに優れた施策も、料理の品質や接客の質が伴わなければ意味がありません。マーケティングと商品・サービス品質の両輪がそろってこそ、飲食店は持続的な成長を実現できるのです。

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